研究概要 |
急速に少子高齢化が進む現状において、財政・社会保障の改革は喫緊の課題となっている。このような状況において、政府は、これまで財政・社会保障の改革を進めてきたが、最近は、将来の財政・社会保障の担い手を増やす観点から、子ども手当拡充や幼保一元化をはじめとする「子育て支援」等にも力を入れている。この関係で、本研究の目的は、人口内生OLGモデルの構築を行い、子育て支援の財源選択(例:消費税、賃金税、資本課税、年金給付の一部削減)や財政・社会保障の改革といった少子高齢化への対応策として想定できるいくつかの政策が、将来の人口動態や財政・経済をはじめ、各世代の効用に与える影響の定量的な把握を試みるというものであった。平成23年度においては、その試作版を構築するという計画であったが、そのベースとなるモデルを構築し、海外査読雑誌("Child Benefit and Fiscal Burden: OLG Model with Endogenous Fertility", Modern Economy, Volume 2, No.4, pp.602-613)に掲載を行った。この分析によると、公的債務(対GDP)が累増する中で、財政の持続可能性を維持する観点から、消費税のみを増税する政策よりも、消費増税と子育て支援の拡充をセットで行う改革の方が、現役世代および将来世代の効用を改善する可能性があることが分かった。なお、本研究の分析に利用するモデルも徐々に完成しつつある。モデルの頑健性について十分な検証が必要であることはいうまでもないが、タイムリーな公表を促す観点から、その試算結果を国内雑誌(「子育て支援の財源選択と世代間効用-人口内生OLGモデルの視点から-」季刊個人金融 vol 6, No.1, pp.50-63)に掲載した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」でも記載したように、平成23年度においては、人口内生OLGモデルの試作版を構築するという計画であったが、そのベースとなるモデルを構築し、海外査読雑誌("Child Benefit and Fiscal Burden: OLG Model with Endogenous Fertility", Modern Economy, Volume 2, No.4, pp.602-613)に掲載を行った。また、本研究の分析に利用するモデルも徐々に完成しつつある。モデルの頑健性について十分な検証が必要であることはいうまでもないが、タイムリーな公表を促す観点から、その試算結果を国内雑誌(「子育て支援の財源選択と世代間効用-人口内生OLGモデルの視点から-」季刊個人金融 vol 6, No.1, pp.50-63)に掲載した。なお、本研究計画では、「必要に応じて政治システムとこれら財政経済や人口動態との関係についても分析を深める」としていたが、その分析の一部について、査読雑誌("Demographic Change, Intergenerational Altruism, and Fiscal Policy - A Political Economy Approach -", Studies in Applied Economics, Volume 6)に投稿を行い、その掲載(予定)が決まった。
|