研究課題/領域番号 |
23730270
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
小黒 一正 一橋大学, 経済研究所, 准教授 (90598153)
|
キーワード | 人口内生 / OLGモデル / 子育て支援 / 財源 |
研究概要 |
急速に少子高齢化が進む現状において、財政・社会保障の改革は喫緊の課題となっている。このような状況において、政府は、これまで財政・社会保障の改革を進めてきたが、最近は、将来の財政・社会保障の担い手を増やす観点から、子ども手当拡充や幼保一元化をはじめとする「子育て支援」等にも力を入れている。 この関係で、本研究の目的は、人口内生OLGモデルの構築を行い、子育て支援の財源選択(例:消費税、賃金税、資本課税、年金給付の一部削減)や財政・社会保障の改革といった少子高齢化への対応策として想定できるいくつかの政策が、将来の人口動態や財政・経 済をはじめ、各世代の効用に与える影響の定量的な把握を試みるというものであった。 平成23年度の試作版モデルでは子育て支援の財源は消費税と公債発行のみであったが、平成24年度においては、その財源を賃金税や資本課税にも拡充することで、上記の分析が可能なように改良し、海外査読雑誌("Child Benefits and Welfare for Current and Future Generations: Simulation Analyses in an Overlapping-Generations Model with Endogenous Fertility", Asian Economic and Financial Review, Volume 3, Issue 4, pp.490-511)に掲載を行った。なお、この査読論文では、人口動態に与える影響については、子育て支援と財政再建を組み合わせた場合に、最も効果がある一方、それに続いて効果があるのが、財政再建をせずに子育て支援を行う場合で、公債発行による財源、賃金税による財源、消費税による財源、そして資本課税による財源で行った場合であることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」でも記載したように、平成24年度においては、本研究の分析に利用するモデル人口内生OLGモデルを構築するという計画であったが、当該モデルを構築し、海外査読雑誌("Child Benefits and Welfare for Current and Future Generations: Simulation Analyses in an Overlapping-Generations Model with Endogenous Fertility", Asian Economic and Financial Review, Volume 3, Issue 4, pp.490-511)に掲載を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究実施状況報告書では、「必要に応じて、引き続き、政治システムが財政経済や人口動態に与える影響を分析するため、その理論モデルの構築も試みる」としており、現在、子育て支援と公的債務に関する理論論文を完成しつつあり、この論文の完成を目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究では成果発表として、海外の査読付学術誌への掲載を予定していた。そこで、上記の理論論文を海外の学術誌に投稿していたところ、平成25年1月に掲載が出来ない旨の連絡があった。このため、確実に掲載されるよう、論文の精度を高め、新たに論文の投稿を行う。これに必要となる経費については、平成24年の研究経費の効果的な使用を行ったところ発生した未使用額を充てる。具体的には、論文投稿料に加え、論文の精度を高めるために必要となる図書・資料の購入等も行う予定である。
|