研究課題/領域番号 |
23730272
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研究機関 | 政策研究大学院大学 |
研究代表者 |
PFAU Wade D 政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (00377128)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | retirement / planning / lifecycle / withdrawals / savings / annuities / finance |
研究概要 |
2011年度は、研究計画のうち、退職計画に関連する3つの研究プロジェクトを、下記のとおり完了した。○退職日の市場のファンダメンタル要因が持続的最大引き出し率(MWR)に及ぼす影響:退職時における株式市場の株価収益率や配当利回りなどの時価評価が、老後の貯蓄からの持続的MWRと密接に関係することが証拠をもって示されている。このことから、適正な引出し率について、新たな退職者に対して有効な提案を行うことができるようになるかもしれない。本研究は完了し、成果は「Journal of Financial Planning」の2011年8月号に掲載された。○持続的最大引き出し率(MWR)のための早期警告システム:退職後数年間における貯蓄の減少とMWRの関連性に関するもう1つの研究である。MWRの変動のうちおよそ80%は退職から10年後の資産の残額によって説明できるということが、米国での証拠で示されている。これは一連の利益率リスクとして知られ、人は退職後早期に起こる資産運用の利益に最も敏感である。こうした知識を持つことは、退職後数年間の引き出し戦略を増やすか減らすかに修正するうえで助けとなる。研究成果は「Journal of Investing」の2011年冬季号に掲載された。○国際的多様性と持続的最大引き出し率(MWR):このトピックに関する私の研究は、モンテ・カルロ・シミュレーションの形態を取り、あらゆる資産クラスや想定利益率を含めることができる。これにより、退職後の引き出し率についての研究範囲を大幅に拡大できた。成果は「Journal of Financial Planning」2012年1月号上で記事として掲載された。さらに、Dimson-Staunton-Marshのデータ・セットを用いて、19の先進国市場における持続的引出し率と貯蓄率を調査した研究論文の共同執筆を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先に述べたように、今年度計画していた3つの研究計画を完了することができた。また、その成果すべてが、ヒアレビュージャーナルに掲載された。引き続き、研究計画に沿って研究を続けていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、労働者が老後のために貯蓄する退職貯蓄段階調査を行い、ライフタイム貯蓄/引出し両段階のモデル構築に取り組む。○退職後の目標を達成するために必要な貯蓄率全国データを使って、ある時代を通じて退職後の目標達成に必要な貯蓄率を調査する。資産配分問題、国際資産、ライフサイクル資産配分戦略などについて考察する。米国向けにIbbotson他(2007年)が行ったものに類似した適切な貯蓄率に関する新たなガイドラインを作成することを目的とし、Dichov(2007年)が提唱する時間加重収益率として示される。○生涯貯蓄/引出し段階合同研究既存研究は、貯蓄段階か引出し段階のどちらかは調査するが、両方同時に行わない。しかし、市場の時価評価と平均回帰は、貯蓄及び引出し率に対して大きな影響をもたらしかねない。本研究では、30~40年間仕事をし、30~40年間退職生活を送ると仮定、各国長期歴史的データを用い、生涯的視点に立った詳細調査を行う。2013年度は、ライフサイクル・モデル統合に向けて、方法論的応用を用い、研究をより洗練、拡張する。不動産やインフレ連動債など他の資産が果たす役割の調査、物価連動型年金及び変額年金や所得保証商品が退職計画に関するアドバイスをいかに変えるかについての検討、税金要素を分析の中に組み入れる方法を発展させること等である。最後の点については、配当、利子、資本利得に対する税金の影響のモデル化が非常に複雑であるため、既存の研究は、貯金は非課税の口座にあると仮定することを余儀なくされているが、私は金融市場取引の税効果に関する完全な調査が可能な各取引(金融資産の売買)のデータベースを開発した。本研究で、改良、一般化し、目標資産配分に対してどれくらいの頻度でポートフォリオの差引勘定をすべきか、どうしたら課税繰延貯蓄の設定を最大限に活用できるかなど詳細な調査ができるようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画どおりに研究が進んだため、未使用額はそれほど生じていない。2012年度請求額と合わせて、研究成果を発表するための旅費、必要な書籍購入等に充てる予定である。
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