研究課題/領域番号 |
23730273
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
山本 雅資 富山大学, 極東地域研究センター, 准教授 (30458947)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | イギリス |
研究概要 |
本研究の目的は、環境負荷の極めて大きい不法投棄という行動がどのようなメカニズムに基づいているかを分析し、国際的に比較を行うことで、政策立案に生かしていくことである。国際比較においては、地理的な環境が近い国同士を比べるものとし、日本、イギリス、韓国を候補としている。 その第一歩とし我が国の不法投棄を分析した論文と比較するためにイギリスの廃棄物制度についての文献調査および聞き取り調査(University of Hull, UK)を実施した。制度が重要となるのは、「廃棄物とは何か」という定義が各国で必ずしも同一ではないためである。そのため、制度的側面を無視してデータ分析を行うことはできない。 近年の英国における廃棄物政策に最も影響を与えているのは、EUによる統一的な指令である。特に、2001年に施行されたThe Landfill Directive(99/31/EC)は最終処分に大きく頼ってきた英国の廃棄物政策のトレンドを大きく変化させた。2005年前後には、民間企業の参入が大きく進み、国際資本の巨大多国籍企業がその多くを占めるようになってきた。売上規模での上位3社のうち、2、3位はオーストラリア系とフランス系の企業であり、この2社のイギリスにおける雇用者数はそれぞれ約8千人、7千人と巨大である。1988年前後の一般廃棄物処理業は、ほぼすべて公的機関であり、わずかな民間企業はほとんどが中小企業であったことを考えると劇的な変化であるといえる。 我が国の一般廃棄物処理は公的関与の割合が大きいが、その大きな理由の一つが不適正処理や不法投棄を防ぐということである。しかし、イギリス環境局の統計をみると、民営化により不法投棄が増加傾向にあるとはいえないことがわかった。しかし、地域的な特徴がみられることから、空間的な特徴の実証的な分析を行う必要性があることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた産業廃棄物の不法投棄による日本・イギリスの比較は、イギリスの現状を調査する中で産業廃棄物が重要な問題とはなっていないということが明らかになったため、研究の方向性を若干修正したため。
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今後の研究の推進方策 |
英国の不法投棄の特徴としては我が国では限定的な家庭ゴミの不法投棄(ただし家電リサイクル対象品を除く)の規模が大きいことがある。その一方、日本の不法投棄は産業廃棄物が主たる要因であることから10トン以上のものに記録が限定されているので、当初予定していた手法で日本・英国を直接的に比較することは困難である。 そのため、空間的な相互関係から不法投棄の「ホットスポット」の要因等を解析すべく、現在、空間計量経済学に基づく実証分析に着手している。具体的には、現在、ONSコードベースで把握しているイギリスの不法投棄発生件数に関するデータが空間的相互依存関係にあるかどうかを検証する。さらにそうした空間的相互依存関係がリサイクル率やその他の廃棄物政策にどのような影響を与えているかを実証的に分析する。 イギリスについての実証結果を吟味した上で、地理的条件の似た国として取り上げている韓国、日本を中心に国際比較を行い、不法投棄を防ぐ廃棄物政策の望ましいあり方について、検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費は、(1)イギリスに関する実証分析にめどがたった段階で国際学会で口頭発表を行うための費用および(2)国際比較で韓国の研究者からの聞き取り調査を行うための出張費用として利用する予定である。 また、人件費・謝金については、国際学会発表用の英語論文の校正に使用する予定である。
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