研究課題/領域番号 |
23730274
|
研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
関田 静香 京都産業大学, 経済学部, 助教 (30583067)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 金融リテラシー / 老後計画 / 資産蓄積 / 金融教育 |
研究概要 |
1996年に始まった日本版ビックバンや「貯蓄から投資へ」のスローガンのもとで行われた株式等に対する税制優遇などにより、以前と比べ個人が危険資産を購入しやすい環境になっている。また、少子高齢化に伴う年金不安、確定拠出年金(401k)導入によって、個人はより自己責任で保有資産を管理しなければならない状況にある。このような環境の中、複雑性を増す金融商品の内容やその投資方法を個人は理解しているのだろうか?また、十分に理解していないとしたらそれは、人々の経済的選択・行動にどのような影響を与えるのだろうか?これらを明らかにすることが、この研究課題の目的である。本年度は、1、日本人の金融リテラシーのレベルを3つの質問項目から測り、2、どのような属性を持った人々において金融リテラシーが低いのかを確認し、3、金融リテラシーと老後のための貯蓄計画を立てるか否かの関係について実証分析を行った。その結果、「複利計算」についての質問に対しては、71%の人が正解したが、「インフレ」については約60%、「リスク分散」について理解している人は全体の40%にすぎないことが分かった。また、どのような属性を持った人々において金融リテラシーが低いのかを確認すると、若い人、女性、低所得・低学歴の人において特にリテラシーのレベルが低いことが分かった。そして、金融リテラシーが高いほど、老後のための貯蓄計画を立てる傾向にあることが実証分析により明らかになった。Sekita, Shizuka (2011) "Financial Literach and Retirement Planning in Japan," Journal of Pension Economics and Finance, vol. 10, pp. 637-656, DOI: 10.1017/S1474747211000527
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、おおむね当初の計画通り、日本人の金融リテラシーのレベルを測定し、どのような属性を持った人々において金融リテラシーが低いのかを確認し、金融リテラシーと老後のための貯蓄計画を立てるか否かの関係について実証分析を行った。その結果をまとめた論文を、海外の査読付き雑誌に投稿し、アクセプトされ、掲載された。Sekita, Shizuka (2011) "Financial Literach and Retirement Planning in Japan," Journal of Pension Economics and Finance, vol. 10, pp. 637-656, DOI: 10.1017/S1474747211000527
|
今後の研究の推進方策 |
<金融リテラシーと老後計画(国際比較)>平成23年度では、金融リテラシーが老後計画を立てるか否かについて、日本のマイクロデータを用いて、実証分析を行ったが、平成24年度においては、アメリカ・中国・インドのマイクロデータを用いて、国際比較を行う。<金融リテラシーと資産選択(日本)>金融リテラシーが、株式の保有確率や保有配分に与える影響を、「くらしの好みと満足度」というアンケート調査(日本版)の結果を用いて実証分析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究テーマの一部について、分析結果の目途がつかない部分があったため、物品費・旅費・英文校正代・雑誌投稿料が繰り越された。次年度においては、実証分析によって得られた結果の類似点や相違点が、各国の法律や制度・文化的要因・宗教・社会的規範などで説明できるのか考えるため、関連書籍を購入する。そして、国内外の学会で発表を行い、そのコメント・アドバイスに基づいて、論文を改訂し、海外雑誌へ投稿する。
|