研究概要 |
金融リテラシーの定義は、文献によって異なるが、例えばHuston(2010)で示された定義を訳すと、「どの程度個人が個人金融に関する情報を理解し利用できるかを測定したもの」である。昨年度実施した、金融リテラシーが資産蓄積に与える影響についての実証分析を引き続き行った。昨年度の結果が頑健かどうかを確認するために、金融リテラシーの変数の定義を変更したり、金融リテラシーの内生性の問題を考慮するために使用される操作変数を変更したりしたが、主たる結果は変わらず、金融リテラシーのレベルが高い人ほど、より多くの資産を保有しており、その数量的効果も著しいことが分かった。また、金融リテラシーが資産蓄積を促すのは、金融リテラシーのレベルが高い人ほど、貯蓄計画を立てるから、というチャネルと、金融リテラシーのレベルが高い人ほど、危険資産を保有する傾向があるから、という2つのチャネルが先行研究では考えられている。それぞれについて確認したところ、両方のチャネルが確認された。 さらに、日本で最初に行われた金融教育とされる「こども銀行」(小・中・高等学校で児童(生徒)が、定期的にお金を学校に持ってきて、銀行員の役を担当する児童(生徒)にそれを渡し、お金を預かった児童(生徒)は、実際の金融機関に預金をするという制度)が資産蓄積に与える影響についても分析した。この制度を通じて、児童(生徒)は、貯蓄習慣が身に付き、将来の資産蓄積にも正の影響を及ぼすことを予想したが、「こども銀行」は資産蓄積に統計的に有意な影響を与えるという結果は得られなかった。 Huston(2010) "Measuring Financial Literacy," Journal of Consumer Affairs, vol. 44, pp. 296-316.
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