研究課題/領域番号 |
23730278
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中村 健太 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (70507201)
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キーワード | 特許付与前情報提供制度 / 審判制度 / 特許経済分析 |
研究概要 |
平成24年度は、情報提供が特許審査(特許の拒絶査定)に与える影響について分析を行った。情報提供制度は、特許出願に係る発明が新規性・進歩性を有していないなどの情報を提供するものである。したがって、第三者が審査において有用な情報を提供していれば、情報提供の対象となった出願は、拒絶査定を受ける確率が増すはずである。また、情報提供を受けて拒絶された出願は、不服審判において復活する確率は低いものと推測される。 そこで、特許の審査段階及び拒絶査定不服審判の請求・成立に対する情報提供の影響を特許レベルのデータを用いて分析した。主な結果は、以下の通りである。まず、特許の技術的価値を表す諸要因をコントロールした上で、情報提供を受けた出願は登録確率が10から15%程度低下しており、情報提供制度は特許性に問題がある出願を有効に排除していることが明らかになった。また、情報提供を受けて拒絶された出願は、審判段階においても特許性の判断が覆る確率が低いことが確認された。これらの結果は、情報提供が行われると審査官が利用可能な情報の量が増加すること、また、それによって特許審査の質が向上することを示唆している。一方で、情報提供が不服審判の請求確率を低下させる効果は確認されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、情報提供が特許審査に与える影響について、当初の計画通り計量分析を行うことができた。分析結果は仮説を支持するものであり、情報提供制度が特許権の安定性を高める上で有用であることが確認された。研究成果は、一般財団法人 知的財産研究所等で報告を行っており、経済学者、法学者、実務家から有益なコメントを得た。また、成果の一部は、論文として既に公表済みである。以上の点から、進捗はおおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度、24年度で計量分析の主要部分は終えることができたが、情報提供の存在を内生化するなど、一部のモデルについては改善の余地がある。そこで、最終年度はそれらの点を考慮しつつ、研究の完成を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、これまでの研究成果を国内外の学会で公表することを通じて研究内容の深化発展を目指す。英語校閲費、成果公表のための国内旅費、外国旅費はこうした目的を達成するために必要不可欠な支出である。また、最新の文献を購入し、知識の蓄積に努める。書籍代はそのために必要な経費である。
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