本年度は,本研究の最終目的である国際的マクロ経済ショックへの政策的対応について検証をおこなった。研究成果として,グローバル金融危機時のデータを用いて,まずは各国の金融政策フレームワークにおける為替レートへの対応についてその変化を実証分析により明らかにし,次いでアメリカ発の金融危機が各国へ与えた影響を金融面および実体経済面からシミュレーション分析を用いて明らかにした論文(How did central banks react to the global financial crisis?)を国内外の学会や大学(The 9th Australasian Development Economics Workshop,日本国際経済学会九州山口地区研究会やChulalongkorn University)にて報告をおこなった。現在,最終版を海外査読雑誌へ投稿中である。 研究期間全体を通じて,当初の研究目的・研究実施計画のとおり,為替レートの変動ショックが政策金利や国内のマクロ経済変数にどのような影響を与えているのかを分析するとともに,外国為替市場への介入についてもその可能性を検証することが概ね実施できた。為替介入の効果に関する論文においては昨今の国際経済における為替介入の意義と同時に難しさを,グローバル金融危機のようなマクロ経済ショックへの対応に関する論文においては各国の金融政策が為替レートの減価に十分な対応をしていないにも関わらず実体経済の回復が見られたことを,それぞれ主張した。特に,後者の論文は国内外の学会で多くの関心を得,単独の研究テーマとして拡張されることになった。なお,予備的研究として位置付けていた研究が海外査読雑誌に掲載された。
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