研究課題
途上国では、食事などの現物が賃金の一部として支給されるケースが数多く観察される。例えば、インドネシアでの現物賃金の利用率は、全国平均で31.7%となっている。こうした状況は、かつての先進国でも見られたが、現物賃金の重要性は経済発展と共に低下してきた。これらのことは、現物賃金が存在する背景として、経済発展の初期段階に特有の事情があることを示唆している。こうした問題意識に基づき、本研究では、現物賃金という賃金形態が、経済発展の初期段階で慣習的な制度として定着し、その後消滅していくという制度的な変化を、労働市場の広域化と所得の上昇という経済発展に内在化された要因によって説明できることを理論的に示した。また、この仮説を、インドネシアの事例に基づいて、理論と実証の両面から体系的に解き明かすことを試みた。理論的な面における成果としては、現物賃金が支給される場合は、現金のみで支給される場合よりも、総賃金水準(現金支給賃金と現物支給賃金の和)が高くなっているというファクト・ファインディングが、効率賃金仮説の栄養モデルにより、説明できることを明らかにしたことを挙げられる。また、実証面における成果としては、西ジャワ州スカブミ県チサアット郡において、ヒアリングとアンケート調査に基づくフィールドワークを複数回実施し、農家家計の属性、調査地の農業慣習、現物賃金の支給状況などについて明らかにしたことが挙げられる。これらの理論分析と実証分析を通じて、効率賃金仮説の栄養モデルと現物賃金という途上国の農村に広く観察される賃金形態が密接な関係にあることを示すことができた。
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IRSA Book Series
巻: 11 ページ: 171-187
The 23rd Pacific Conference of the Regional Science Association International (PRSCO 2013) Conference Proceedings
巻: 1 ページ: 27-27