研究課題/領域番号 |
23730286
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
中澤 克佳 東洋大学, 経済学部, 准教授 (20453855)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 介護保険 / 戦略的相互依存性 / ヤードスティック / 福祉競争 / 介護移住 / 歳出行動 / 立地選択 |
研究概要 |
本年度は研究遂行に必要なデータの入力・整理と実証研究を遂行した。 データ収集と整理の状況に関して、『人口動態統計』の市区町村別・年齢階層別死亡者数、『住民基本台帳人口要覧』の市町村別・年齢階級別の人口データを整理した。それに加えて、男女別でのデータ整理をおこなった。これらのデータを用いることで、次年度以降に「高齢者の男女別の介護移住」について検討することができる。また、東京都の訪問介護事業者データを「WAMNET」より構築することで、営利・非営利事業者の参入行動、立地選択の定量分析が可能になる。 研究では、地域内所得格差の拡大が自治体歳出に与える影響を定量的に分析した「住民選考の多様性と自治体歳出」を小樽商科大学100周年記念シンポジウムにおいて報告を行っている。本研究は同記念出版事業『グローバリズムと地域経済』の一編として2012年度中に刊行予定である。また、論文"Inter-jurisdictional Interaction on Premium-setting; the Case of Long-term Care Insurance in Japan"は介護保険料設定に関して自治体間の戦略的相互依存関係を定量的に検討したものである。京都産業大学の菅原宏太准教授、愛知大学の國崎稔教授との共同研究を行い、2012年3月16日から17日にかけてDepartment of Economics and Business University of Cataniaで行われたInternational Workshop "Political Economy and Related Issues in Public Economics"において報告を行った(共著者の掲載許可を得ている)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度である今年度において、実証研究に必要なデータの多くを収集・整理することができた。訪問介護事業者など一部のデータに関しては、他の地域特性データとの連結作業が必要になってくるので、早急に作業を遂行する。以上のデータを用いることにより、次年度以降において「介護移住行動の経年変化」、「男女別の介護移住行動」、「介護事業者の立地選択」、「営利・非営利別の参入行動」などの研究が順次遂行可能になっている。 今年度おこなった研究に関しては、小樽商科大学100周年記念シンポジウムにおいて報告を行った「住民選考の多様性と自治体歳出」に関して、同記念出版事業『グローバリズムと地域経済』の一編として2012年度中に刊行予定である。本研究に関しては、拡張・発展させた研究を「中位投票者仮説の再検討」として2012年度の第16回公共選択学会(専修大学)において報告する予定である。また、英文化し海外査読誌に投稿することを予定している。 一方、Department of Economics and Business University of Cataniaで行われたInternational Workshop "Political Economy and Related Issues in Public Economics"において報告を行った"Inter-jurisdictional Interaction on Premium-setting; the Case of Long-term Care Insurance in Japan"に関しては、修正をおこない2012年後半の日本経済学会秋期大会での報告を予定している。本研究も共著者と検討の上、海外査読誌への投稿を行う。 全体として、データの収集・整理、研究の実行のサイクルが機能しており、研究の進展は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画に沿って、23年度中に構築したデータをもとに分析を進める。24年度以降は主に申請者単独で進めることになる。また、24年9月よりドイツ・マールブルク大学に交換研究員として赴任する予定であるため、介護保険制度の先行事例であるドイツを中心に欧州の制度・先行研究を参照しつつ研究を進めたい。欧州における学会・研究会での報告を積極的に検討する。 24年度前半は、既発表研究の修正と投稿を中心に作業を進める。それと同時に介護移住の研究と参入行動の研究に着手する予定である。これら研究に関しては、研究手法については既に行った研究によって確立していることから、比較的早い段階で分析は可能である。英文化と投稿を早い段階でできるようにする必要がある。この点に関しては外部の英文校正業者を利用する予定である。 介護保険料ないし介護保険給付費の地域間相互依存関係の研究に関しては、大規模な空間マトリクスを用いた定量分析が必要となるため、プログラムを構築してマトリクス作成が必要となる。手法の開発に関して検討する必要があるため、優先順位はやや低めに設定する。共著者との研究に関しては、これまでと同様にメール等を通じて議論をおこなっていく予定である。 24年度後半は留学先において研究所への所属とセミナーでの報告が決まっているため、そこでの研究・報告をおこなう予定である。可能であれば受け入れ先の研究者と共同研究をおこなうことを検討したい。後半の研究遂行に関しては、東洋大学研究協力課等と適宜メールで連絡を取り、研究遂行に支障が出ないよう配慮する。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度はデータの収集・入力・整理が主であり、分析に必要な統計ソフト等を導入するのと同時に実証分析を進めてきた。分析記の基盤となるデータ環境の整備に比較的力を注いできたといえる。 24年度はこれら基盤をもとに分析と公表(報告と投稿)を中心にする予定であり、主として学会・研究会報告のための旅費と、英文校正に関連する謝金を中心に研究費を執行する予定でいる。
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