研究課題/領域番号 |
23730287
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
櫻井 一宏 立正大学, 経済学部, 講師 (20581383)
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キーワード | 政策シミュレーション / 物質フロー / 流域圏 / 社会経済活動 / 環境負荷 / 陸海域モデル |
研究概要 |
平成24年度は,東京湾流域における物質フローバランスモデルの構築とその適用を試みた.すなわち,指標とする対象物質を栄養塩類とし,陸域における点源および面源からの発生を始点として水循環による輸送プロセスを経由し海域に至るまでのフローを仮定したモデルを構築した.発生点源は消費部門である家計および生産部門である産業活動としこれを社会経済系と呼び,発生面源は対象地域の各土地利用区分および降雨として各系統からの発生負荷量を推計した.さらに発生負荷量に関しては,自然浄化など水循環による輸送プロセスにおける要因や沿岸域の地形などの環境要因による影響についても考慮し,これらを経て東京湾へ流入する量を流入負荷量として推計を試みた.具体的には,昨年度整理した東京湾流域の諸データのうち過去の土地利用に関する空間情報のデジタル化を進め,各土地利用区分の詳細な定義とそれぞれに関する面積の定量化を行った.特に江戸時代末期から現在にかけての東京湾における埋立地や海岸線の変化など土地利用形態に関する情報を整理し,東京湾全体としての地形および環境変化について検討した.また,同時代の人口規模や産業構成に関する調査を行い,これらについて定量的なデータとして整理した上で対象物質の発生にどの程度の影響が生じるか検討した.以上より,東京湾流域モデルを構築して同流域の陸域における対象物質の社会経済系および面源系による発生負荷量と東京湾への流入負荷量を推計した.モデルによる物質フローを分析し,東京湾沿岸域の水質など海域環境について検討を行うとともに,当時の漁業や生態に関する資料をもとにモデルによって導出された環境情報について検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象地域である東京湾流域圏の物質フローバランスモデルを構築し,収集した社会経済活動や土地利用形態に関するデータに基づき,当該地域の江戸時代末期に適用して分析を行った.栄養塩類を指標とし,社会経済系および面源系による発生負荷量と各環境要因の影響を考慮した東京湾への流入負荷量について推計し,当時の沿岸海域環境について考察を行った.一方,有明海およびその流域については,主に土地利用データと沿岸環境に関するデータ収集を進め,一部デジタル化を行った.
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今後の研究の推進方策 |
東京湾流域に関するモデル分析については,結果の考察を進めるとともに特に沿岸環境の影響に関してモデルの精緻化を行う.有明海流域圏については基礎データを収集してデジタル化を行い,東京湾モデルを参考としながら物質フロー分析のためのモデル構築を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
データ加工,現地調査,成果発表等
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