研究課題/領域番号 |
23730288
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研究機関 | 名古屋学院大学 |
研究代表者 |
菅原 晃樹 名古屋学院大学, 経済学部, 講師 (80581503)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 開発経済学 / 経済成長論 / 児童労働 / 効率賃金仮説 |
研究概要 |
本研究課題を達成するために、本年度は主に「児童労働に対する効率賃金」が開発途上国の経済活動に与える影響を分析する経済モデルを構築し、そのモデルの定性的な性質を調べた。その分析結果を以下に述べる。開発途上国のように家計が貧しいならば、雇い主がもし限界的に高い賃金を設定したとしても、家計の他の構成員にその賃金が回されることにより児童の栄養水準の限界的な上昇率は低い。よって児童の限界的な生産性の上昇率も低くなってしまうことにより、経営者は低い賃金を設定することとなる。このように企業は児童の栄養水準に応じた生産性をもとに賃金を決定し、一方で児童の栄養水準は家計の所得に強く依存するという相互関係を理論モデルで分析することにより、貧しい経済状態にある児童には低い賃金が設定されるという貧困の罠が起こることを示した。この研究成果を基に次年度以降、構築したモデルを人的資本理論を用いて拡張し、動学分析を行うことにより経済発展への影響を調べる。また、コンピュータを用いたシミュレーションにより定量的な厚生分析と政策分析を行い、児童労働撲滅と経済発展に関する政策提言を行う予定である。最後に、本研究課題に関連する研究である児童労働に関するその他の研究成果を述べる。1.最悪の形態の児童労働が経済成長にどのような影響を与えるかを分析した論文がEconomics Bulletinに採択され第31巻2号に掲載された。2.児童労働の禁止政策が児童労働の水準に逆効果を持つ可能性を分析した論文を改訂し、英文査読付き学術誌に投稿した。3.FDIが児童労働に与える影響を分析した論文を加筆・修正した。近々英文査読付き学術誌に投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の「研究の目的」として、「「児童労働に対する効率賃金」が開発途上国の経済活動に与える影響を分析するための経済モデルを構築すること。また、そのモデルの定性的な性質を調べること。」を挙げた。これに関してはさきに述べた研究業績の概要にある通り本年度中にほぼ達成した。また、研究実施計画にあげた以下の2つに関して述べる。1.国内・海外の学会等に積極的に参加するという計画に関して、海外へは行けなかったが国内の学会に積極的に参加(報告1・討論1・その他参加4)をした。2.本課題研究に関する論文を書き上げる準備として、文献や研究資料の収集を行うことについて、様々な図書を収集することにより、よりよいモデルを完成させるための知識の習得がおおむねできた。これらを総合的に判断すると、本研究課題の達成に向けておおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策は、本年度構築したモデルに時間軸を取り入れて拡張することにより動学分析を行い、経済発展への影響を分析することである。また、最終的な目的である政策シミュレーションを円滑に行えるように、数値解析のための解析ソフトウェアの研究資料を収集し、見識を深めることを計画している。シミュレーションに関してはMathematica7を用いて行う予定であるが、それに関連した研究資料を収集し見識を深めたい。また、本研究課題に関連するその他の児童労働の研究に関して、随時学会報告等を行うことにより意見を集める。また、英文査読付き学術誌への投稿を通じた改訂作業を継続して行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
モデルに基づいて政策提言を行うために、定量的なシミュレーションをすることが必要となる。この数値計算を実施するために解析ソフトウェアであるMathematica 7を購入する。加えて、本研究に関連する開発経済学、国際経済学、及び労働経済学の書籍と研究資料、モデルの設計と分析に関連するミクロ経済学・マクロ経済動学の書籍と研究資料、解析ソフトウェアMathematica 7に関連する書籍を購入する。最後に、様々な意見を集めるために1~2回程度の国内における学会への参加・報告を予定している。また、セミナーやカンファレンスに積極的に参加・発表をすることにより、幅広いコメントを受けて論文を改訂する。このための国内旅費が必要となる。
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