研究課題
本研究は、最低賃金とマクロ経済の雇用、賃金、格差、物価上昇率などの関係について理論的な研究をすること、1990年代以降における最低賃金以下で働く雇用者の特徴について明らかにするとともに、最低賃金の引き上げによる、1990年代以降の経済全体の雇用と産業別・企業規模別・年齢別・性別などの各雇用に対する増減効果や貧困削減効果について計量分析を行い明らかにすること、最低賃金の国際比較を行い、わが国の最低賃金政策のあり方を検討することを目的としている。平成24年度の実績は次のとおりである。理論研究では、小野(2009)モデルに、二重労働市場と最低賃金を導入したモデルを構築し、最低賃金の引き上げによって、デフレ解消と雇用増加が実現できるメカニズムを示した。現在、論文を執筆中で平成25年度中に、完成する予定である。実証的な研究では、不平等指数(例えばMLDなど)の要因分解手法について研究した「Inequality and a multiple subgroup-decomposition method」を大阪経済大学のワーキングペーパーとして発表し、英文雑誌に投稿中である。この論文の手法では、最低賃金の引き上げの効果を直接分析できないが、格差や貧困率の要因を一つだけでなく、二つ以上を同時に分析できるという利点があり、格差指標や貧困率の要因を特定するための基礎を提供したといえる。今後、最低賃金が貧困率や所得格差に与える影響を分析するうえで、この論文の要因分解の手法を発展させる必要がある。この論文を準備するうえで、Eastern economic association、日本経済学会、日本応用経済学会、神戸大学の六甲セミナーなどで、報告したコメントを論文に反映させてきた。
3: やや遅れている
最低賃金の引き上げのマクロ的な影響を考える理論研究が、今年に入ってようやく進んだ状況で、当初の予定から遅れている。また実証的な研究でも、最低賃金にバインドするような労働者の属性を統計的に調べなければならないが、まだこちらも実現できていない。授業や校務に追われて、なかなか研究に時間がさけていないため、研究が遅れている。今後、研究時間をもっと増やすことが必要である。
今年度は、最低賃金引き上げのマクロ的な効果をみるための理論モデルの論文を完全に完成させ、英文雑誌に投稿し、最低賃金の統計的把握のための「賃金構造基本統計調査」の個票データの取得を行い、スウェーデンやフランスの最低賃金に関する調査を行う計画である。
書籍購入、出張、英文校正などに用いる。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Osaka University of Economics Working Paper Series, No. 2012-8.
巻: 2012-8 ページ: 1-28
Osaka University of Economics Working Paper Series, No. 2012-5.
巻: 2012-5 ページ: 1-43