最低賃金引き上げが、雇用に与える影響は、経済学を専攻する研究者の間で意見が一致していない。一般的に言われている、最低賃金の引き上げ→消費の増加→総需要の増加→雇用の増加という経路は、標準的な(新古典派)マクロモデルを用いた場合には、現れない。なぜなら、標準モデルでは、最終的に、供給サイドで、GDPが決まるので、最低賃金の引き上げ→賃金コスト増加→雇用量の低下→総供給の低下となってしまう。しかし、本研究では、標準モデルとほぼ同様のマクロモデルを用いて、デフレ下においては、前者の効果が支配的となり、最低賃金の引き上げが雇用、総需要、経済厚生を増やし、デフレを緩和させることを示した。
|