研究課題/領域番号 |
23730298
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
新居 理有 広島大学, 社会(科)学研究科, 特任助教 (70590462)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 財政の維持可能性 / 財政の持続可能性 / 公債 / 財政政策 / 経済成長 |
研究概要 |
平成23年度においては,多世代の家計からなる世代重複モデルを用いて,日本において維持可能と考えられる基礎的財政赤字の規模に関する定量的な評価を行った.その結果,日本において長期的に基礎的財政赤字を維持するためには,非現実的と考えられる高さの経済成長率が必要となることを明らかにした.これは現在の日本において,財政再建の為に,少なくとも長期的には基礎的財政収支を黒字化する必要性があることを示唆している.日本経済における財政の維持可能性に関して定量的な評価を行う研究の一つとして貢献を果たすとともに,財政再建の為に必要となる財政政策の集合に関する情報を提示したという意味で,政策面での貢献も果たしていると考えられる.なお本研究は中央大学ならびに財務省財務総合政策研究所での研究報告を行っており,現在研究成果を上田淳二氏(財務省)と共著論文として取りまとめている最中である. また,政府支出がマクロの生産性を上昇させる効果を持つ際に,政府支出の規模と財政の維持可能性の間にある関係についても分析を行った.その結果,政府支出が生産性上昇効果を持つ場合,(1)政府支出規模が小さいときは,政府支出を増加させることで公債残高/GDP比率の発散を防げる可能性があること,(2)経済成長率を高めるような財政政策を採用したとしても,公債残高/GDP比率の発散を防げるとは限らないことを示した.また,各世代の家計の厚生に与える影響も分析した.なおこの結果は学術論文として,査読付国際学術雑誌FinanzArchivにて公表されている.この研究は,財政政策がマクロ経済に与える影響によって,維持可能な財政政策の選択肢が大きく変わり得ることを示唆しており,今後維持可能な財政政策の定量的評価を行う上で重要な知見を与える結果と考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一年目の研究計画として挙げた内容の分析は完了しており,また現時点で研究結果を論文にまとめる作業に既に着手しているためである.またこの状況を受けて,近いうちでの学会等における研究報告及び論文の投稿は可能であると考えており,進捗状況は順調であると結論付けられる.
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今後の研究の推進方策 |
一年目の研究結果の取りまとめを早急に完了し,関連分野の学会での報告および学術雑誌への投稿を目指す.また,二年目の研究計画として挙げた,財政の維持可能性を保証するための初期時点の公債残高に関する条件の分析に着手する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が発生したのは,研究機関の異動に伴い,備品類の整備が研究機関における研究費により可能となったためである.これらの次年度使用額は平成24年度請求額と合わせて,より多くの研究成果の公表・発信を行うために使用する予定である.また本研究計画においてより豊かな結果を得るため,財政政策やマクロ経済に関する最新の研究成果の取材や,外部の研究者を招聘しての研究会開催のための経費にも使用することも検討している.
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