研究課題/領域番号 |
23730303
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
浅井 義裕 城西大学, 現代政策学部, 助教 (60433645)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 保険需要 / リスクマネジメント / ファイナンス |
研究概要 |
本年度は、3つの点を明らかにした。第1に、企業の保険需要(ロス・ファイナンス)と密接な関係がある、ロス・コントロールについて、理論的な観点から分析を行った。具体的には、規制緩和が進み、保険料の価格競争が進むと、保険会社は、保険を引き受けている企業のロス・コントロールを求めて、企業に事故確率が低下するように、一定のコストをかけてモニタリングをする可能性があることを示している。つまり、損害保険業において規制緩和が進んだわが国においても、企業がリスクマネジメントを行う環境が整いつつあることが分かった。今年度の研究成果の一部は、保険リスクマネジメント分野のコア・ジャーナルの1つであるJournal of Insurance Issues 34巻2号 pp.172-188から公刊している(Asai, Yoshihiro, and Mahito Okura, 2011, "How Do Cost and Regulation Change Loss Control Activities and Insurers' Monitoring?")。第2に、愛知・岐阜・三重の中小企業180社程度に対して、保険需要のアンケートを行った。東日本大震災以降の保険需要の変化や、銀行窓口販売の解禁の影響など、政策的に重要なテーマについて、データを収集している。今後は、分析を進めて、成果を公表しようと準備を進めている。 第3に、マーシュ・ジャパンと共同で、大企業160社に対して、東日本大震災以降の保険需要の変化、保険の購入を担当している部署などについて調査を行い、成果を公表しようと準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
企業の保険需要(ロス・ファイナンス)と密接な関係がある、ロス・コントロールについて、理論的な研究を進めてきて、規制緩和が重要な要因であること明らかにしてきた。その他、リスクマネジメントや保険需要に関する背景を理論的に明らかにし、初年度に予定していた保険需要の理論的な研究については、当初の目標を達成できたものと考えている。また、愛知・岐阜・三重の中小企業180社程度に対して、保険需要のアンケートを行い、来年度以降実施する、本格的なアンケート調査の準備を行ってきた。さらに、マーシュ・ジャパンと共同で、大企業160社に対して、保険需要の変化などについて調査を行ってきた。当初の予定では、本年度は、質問票を作成するだけの予定であったが、本格的な調査を行うにあたり、企業と共同でアンケートを実施するなど、当初の予定よりも研究は進んでいると評価できる。 アンケートの結果からわかることは、大企業でも、中小企業でも、東日本大震災以降に新たに保険を購入した企業は10%と、企業はリスクマネジメント・保険需要の判断を合理的に行っていることが確認できた点が成果である。こうした事実を成果として公表していくこと、来年度以降のアンケートの内容に反映することが今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
以下の4つの点から、企業の保険需要を明らかにしようと試みる。第1に、ファイナンスの基礎的な理論に基づいて考えると、上場企業は保険を購入することはないといわれているが、実際には多くの大企業が、保険を購入している。また、オーナー企業など中小企業では、保険需要が多いと考えられている。本プロジェクトでは、こうした理論的な予想に対して、アンケート調査という手法を用いて、データの制約を克服し、実証的な証左を与えようと試みていく予定である。第2に、当初の予定では、ファイナンスの理論に基づいて、保険需要の分析を行うだけの予定であったが、東日本大震災が発生したため、世界的に注目されているテーマでもある自然災害の観点からも、研究を進める予定である。具体的には、東日本大震災以前と以後の保険・リスクマネジメントの対策などの要素を織り込んで、アンケート調査を実施していく予定である。 第3に、アンケート調査によって、サブプライム問題で注目を集めた金融派生商品の購入状況に関するデータを収集し、分析をし、企業のリスクマネジメントのあり方を明らかにする予定である。 第4に、名古屋大学教授家森信善氏の協力を得て、銀行と企業の関係、信用保証などのあり方が、企業の保険需要と関係しているのかを明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の利用計画は、以下の3つである。第1に、中小企業の保険需要を明らかにするために、本年度に実施した、小規模のアンケートを精緻化する形で、大掛かりなアンケート調査を実施する予定である。広範囲に中小企業へのアンケートを実施して(郵送と返送の費用)、それらに対応する企業の財務情報などを調査会社から入手する予定である。予算の許す限り、大規模なデータを収集し、分析結果の信頼性を高める予定である。第2に、研究内容の精度を高めていくため、また、今後多くの研究者に関心を持ってもらい、本プロジェクトのような分析を様々な国で行うために、ソウル・ニューヨークで開催されるAsia-Pacific Risk and Insurance Associationやラスベガスで開催されるWestern Risk and Insurance Associationで研究の成果を発表するために、研究費を利用する予定である。 第3に、論文の執筆を進めて、海外の学術雑誌から公刊するために、ネイティブチェックの費用として、研究費を利用する予定である。
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