本プロジェクトでは、今年度アンケート調査を実施した。具体的には、2014年1月に「企業の保険リスクマネジメントに関する実態調査」という表題の下で、全国の製造業の中小企業3500社に対してアンケートを送付し、909社から回答を得た。以下では、主な結果を紹介していく。 第1に、「リスクマネジメントの手段として、デリバティブを利用したことがある」と回答した企業は12.8%である。また、「資金運用の手段として、デリバティブを利用したことがある」と回答した企業は10.4%である。つまり、中小企業によるデリバティブの利用実態は2割程度であることが確認できる。 第2に、回答企業の損害保険料支払いの平均値は約490万円、中央値は255万円である。また、生命保険料の支払額の平均値は約881万円、中央値は300万円である。詳細を見ると、火災や自動車事故のリスクはカバーされているが、賠償責任などはカバーされていない傾向があることが明らかになった。 第3に、地震保険の購入割合は、東日本大震災以前にも約15%、東日本大震災以降に新たに購入した割合は約9%である。日本経済新聞(2014年5月6日)によれば、中小企業の地震保険購入は10%未満と紹介されているが、本プロジェクトの結果からは、25%近い中小企業が地震保険を購入していることが確認できる。本プロジェクトのアンケートは、中規模の企業が中心であること、製造業だけを対象としている点に考慮が必要だが、保険リスクマネジメントの政策を考えていく上では、重要な違いとなる可能性があるという点で、本プロジェクトが示している結果は重要である。
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