IFISデータベースに基づきアナリストレポートの更新が株価に及ぼす影響についてイベントスタディを行った。各社業績予想をもとに投資評価(レーティング)をつけているが、コンセンサスレーティングが下がった場合、上がった場合、変化なしの各々について、レーティング付与社数の増加、減少、変化なしと分けて検証を行った。結果、コンセンサスレーティングが下がった場合のレポートの更新は、負で有意な異常収益率が検出され、コンセンサスレーティングが上がった場合には正で有意な異常収益率が検出された。また、その影響はレーティング付与社数が変化なしの場合が最も大きく、次いでレーティング付与社数が減少した場合であった。 また、同データベースから、分析期間中のアナリストの目標株価の標準偏差を用いて、主観的リスクを計測した。株価変化によるリターンに対して条件付分散不均一モデルを適用し、主観的リスクを外生変数として組み入れたモデルの推定を行った。条件付分散に主観的リスクの変数が影響を与えている銘柄とそうでないものが混在していることが確認された。株価指数においても確認を行うため、Quick社が提供するQSSレポートから機関投資家を中心としたマーケット関係者のTOPIX予想と日経平均予想のデータを用いて、主観的リターンと主観的リスクを計測した。予想期間が長期になるに従って、予想時点よりも高い指数を予想する傾向にあり、予想者間のばらつきも大きいことが確認された。指数の変化によるリターンに対して主観的リターンを用いて回帰分析を行ったが、有意な影響を与えている結果となった。また、主観的リスクを組み入れ条件付分散不均一モデルの推定を行ったが、有意な影響を与えていた。以上の分析からアナリスト予想のばらつきは将来の不確実性を表していると考えられ、株式リターンのボラティリティ予想に活用できる可能性が確認できた。
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