研究課題/領域番号 |
23730306
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
廣瀬 康生 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (50583663)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 動学的一般均衡モデル |
研究概要 |
23年度中は、(1)名目金利の非負制約を考慮した動学的一般均衡モデルの解法についての検討と、(2)実体経済変数が確率的トレンドに従う動学的一般均衡モデルの推計に関する研究を行った。(1)については、経済主体の完全予見を仮定し、名目金利の非負制約を考慮した非線形モデルを数値計算によって解くことができるかどうかを検討した。マクロ経済に対する負のショックが大きい場合、解を見つけることは困難であることが分かったため、他の方法を検討することとした。(2)については、確率的トレンドを導入することによって実証的パフォーマンスが向上したモデルを用いて、予期されたマクロ構造ショックを分析した2本の論文の作成および発表を行った。「Changes in the Federal Reserve Communication Strategy: A Structural Investigation」(黒住卓司氏との共著)では、予期された金融政策ショックを推計し、中央銀行のコミュニケーション戦略の変化を分析した。「Identifying News Shocks with Forecast Data」(黒住卓司氏との共著)では、民間経済主体のマクロ経済予測に関するデータの利用が予期されたショックの識別に役立つことを示したうえで、予測データをモデル推定に用いると、予期された技術ショックが景気変動の主要因となり得ることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデルの非線形性(特に、名目金利の非負制約)を考慮した動学的一般均衡モデルの構築については、引き続きモデルの解法についての検討が必要であり、シミュレーションやパラメータ推計といった応用分析までには、暫く時間がかかると思われる。経済変数の定常状態およびトレンドの変化を動学的一般均衡モデルに取り込む研究は、2本の論文を作成したことから、十分に進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
名目金利の非負制約を考慮した動学的一般均衡モデルの解法については、Bodenstein, Guerrieri, and Gust (2010)にみられるように、線形のモデルを利用しつつ、予期された金融政策ショックを内生的に求めることによって名目金利の非負制約を表現する方法を検討したい。経済変数の定常状態およびトレンドの変化を動学的一般均衡モデルに取り込む研究については、これまでに作成した2本の論文を国際的に影響力のある学術雑誌へ投稿することを展望し、国内外でのコンファレンス、ワークショップ、セミナーへの積極的な参加を通じて、論文の改訂作業を進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度は、ほぼ計画通り研究費を使用したものの、予定していたPC本体の購入を見送ったこともあって、若干の残金が発生した。残金は、次年度以降の出張旅費に使用する予定。24年度は、国際コンファレンスやワークショップにおいて論文報告を行なうため、2~3回の海外出張を計画しており、その費用が研究経費の殆どを占めることになる。その他、論文の英文校閲や学術雑誌への投稿にかかる費用にも使用する予定。
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