研究課題/領域番号 |
23730312
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研究機関 | 名古屋経済大学 |
研究代表者 |
加藤 秀弥 名古屋経済大学, 経済学部, 准教授 (80434629)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 民営化 / 企業の退出行動 / 地域経済 / 財の品質 |
研究概要 |
本研究は,混合寡占モデルを用いて,公企業の民営化に伴い「民営化された企業が市場から退出する可能性」を理論的に考察することを目的としている。特に,市場規模が異なる非対称地域を考慮し,民営化された企業が不採算地域の市場から退出する可能性を考察すると共に,民営化が社会厚生にいかなる影響を与えるかについても明らかにする。 本年度は,以下の3点において研究が進められた。まず,現実的なモデルを構築するため,民営化の歴史的経緯,民営化を行うに至った経済状況,民営化の成功例・失敗例といった点について調べた。 次に,市場規模が異なる非対称地域のモデルを用いて,民営化された企業が小規模地域の市場から退出するモデルを構築した。それにより,市場規模の大きさだけでなく,私企業の数,固定費用の大きさが,民営化された企業の退出要因となることを示した。さらに,民営化により小規模地域においては社会厚生が減少するものの,大規模地域では社会厚生が増加することから,都市化・過疎化が進む今日において,社会厚生の観点から民営化の流れが是認されることを明らかにした。 最後に,垂直的差別化モデルを用いて,民営化が財の品質に与える影響について分析した。これにより,混合寡占市場において公企業は私企業よりも高い品質の財を生産したほうが社会厚生を大きくできること,さらには,品質を考慮に入れると民営化は社会厚生の減少を招くことを明らかにした。なお,この研究成果は学会において報告された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,今年度は,1.民営化の歴史的・現実的事例についてのサーベイを行うこと,2.サーベイによって得られた現実的事例を踏まえた理論的枠組みを構築すること,3.次年度に行うシミュレーション分析のためにデータ等の収集を行うこと,を目標としていた。はじめの2つについては,予定通りあるいはそれ以上に研究が進められたといえる。最後のデータ収集については,十分な収集ができていないのが現状である。当初は,モデルが複雑化する恐れがあったため,シミュレーションによる分析を行う予定であった。しかし,比較的シンプルなモデルを構築することができ,解析的に分析することが可能であるため,現段階ではデータ収集が不十分でも問題がない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も,これまで行ってきた研究をさらに精緻化していく予定である。具体的には,本年度構築したモデルに税を考慮した形で拡張を試みる予定である。これにより,モデルが複雑化し,定性的に解が求められなくなる可能性がある。そのため,データを使用してシミュレーション分析を行うことで,より現実的な議論および経済的解釈を行う。そこで用いるデータについては,国内データだけでなく,海外データも使用できるようにするため,データ収集を併せて行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,海外での民営化による実情を把握するため,データ収集等の研究旅費に対する支出を中心とする。これについては,本年度に十分なデータ収集ができなかったためである。また,データ収集が予定通り進まないことも考えられるので,民営化に関する文献の購入にも使用する予定である。本研究の最終年度となるため,英文校正・論文投稿料などにも支出する予定である。
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