研究課題
本年度は、企業レベルのデータを用い、日本企業の資金再配分(credit reallocation)の統計的性質について検証を行った。本検証によって得られた主な結果は以下である。(1)全ての年において非常に大きな資金再配分が生じている。つまり、いかなる景気変動のもとでも、相当規模のcredit creationとcredit destructionが同時に生じており、元来、個々の企業の資金調達行動は非常に異質(heterogeneous)である。(2)全企業、あるいは大企業で見た場合には、credit creationとcredit destructionのボラティリティはほぼ同程度であるのに対し、中小企業で見た場合には、credit creationの方がcredit destructionよりもボラティリティが小さい。つまり、情報の非対称性の問題が深刻である中小企業においては、credit creationに何らかの摩擦が伴っている。(3)業種、地域、規模といった部門で企業を分類し、資金再配分を部門間のbetween効果と部門内のwithin効果に分解すると、その大半は部門内のwithin効果で説明される。つまり、資金再配分は業種、地域、規模といった部門レベルの資金調達行動の異質性ではなく、個別企業レベルの資金調達行動の異質性を反映している。(4)資金再配分は景気と逆相関(countercyclical)である。つまり、企業の資金調達行動は景気後退期においてより異質となる。(5)資金再配分の時系列変動の大半は、企業レベルの固有ショック(idiosyncratic shock)によって説明される。つまり、資金再配分の時系列変動を生み出す最も重要な源泉は、個別企業レベルの資金調達行動の異質性(heterogeneity)にある。
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Journal of the Japanese and International Economies
巻: Vol. 26 (1) ページ: 84-109
10.1016/j.jjie.2011.12.001
経済学論集
巻: 第78巻第3号 ページ: 2-13