本研究は,1998 年3月に実施された金融機能安定化法に基づく邦銀21行に対する資本増強と1999年3月に実施された早期健全化法に基づく邦銀15行に対する資本増強の介入効果を推定し,日本の公的資金注入がどのような意味で機能し,どのような意味で機能しなかったのかを銀行別のパネルデータと銀行と借入企業のマッチングデータを利用して分析している.銀行の財務リスクを低下させ,銀行システムの安定化に寄与するという意味においては政策プログラムとしての公的資金注入が望ましい効果をもたらした可能性が推察される一方,資本注入そのものが銀行貸出や銀行の収益性を大きく改善させることの可能性は確認されなかった.
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