本研究は、各都道府県をプレイヤーとする提携形成ゲームにより、地方交付税などの財政移転制度が道州への統合に与える影響とそれを促進する制度改革について分析することが目的である。 昨年度までに、都道府県に関する財政データとその数値シミュレーションから作成した統合効果を利得とした提携形成ゲームで経済実験を行い、強ナッシュ均衡戦略が選ばれやすいということを明らかにした。これは提携形成において公平性や利他性が特に重視されているというわけでないことを示唆している。しかし、実施した経済実験における参加者の性別の偏りがこの結果に影響している可能性を指摘され、25年度に性差と利他性に関する経済実験を追加的に行った。 本年度も引き続きその経済実験を関西大学で学生の協力者を対象に行った。ただし、当初の研究計画にない実験でもあり、本年度までの実験実施では分析に必要なだけのデータを集めることはできなかった。そのため、この点については本研究期間終了後も引き続き行っていく。 全体構想(3)の現在の財政移転制度の影響と今後の制度改革について、これまでの成果である強ナッシュ均衡を基にした意思決定シミュレーションを行った。自発的な道州形成を促進するためには地方交付税制度を規模に関して中立的なものにする必要があることがわかった。ただし、統合効果の利得は現在の財政データを基に算出するだけでなく、将来的に増加が見込まれる社会インフラの更新投資についても考慮するべきである。そこで、将来の道路インフラの更新投資を推計し、それを利得とした場合の意思決定シミュレーションを行った。なお、最終年度の途中から在外研究で日本を離れたため、意思決定シミュレーションに関する学会発表等は翌年度以降に行う予定である。
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