研究課題/領域番号 |
23730320
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅原 歩 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10374886)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 英豪資源企業 / 競争力 / リオティント / 西オーストラリア / 鉄鉱石 |
研究概要 |
ポーターの「5つの力」の枠組みを援用して、英豪資源企業リオティント社の西オーストラリア州での鉄鉱石事業への参入過程に関する分析を行った。参入過程を、(1)鉱石の買い手である日本企業(商社・製鋼企業)との交渉過程、(2)鉱区供給者である西オーストラリア州政府との交渉過程、(3)競合企業(カイザー・スティール社、米国)との提携交渉過程に分けて分析を行った。(1)については、探査開始後にロンドンのリオティント本社に複数の日本商社からの接近があったことが明らかになった。日本商社は、オーストラリア以外での取引関係を基礎に接近した。したがって、イギリス所在の多国籍企業であることが販売面での同社の競争優位に結びついていた。(2)については、西オーストラリア州政府との交渉が、リオティント社の鉄鉱石事業参入にとって最も困難であったことが明らかになった。リオティント社がハマースレー鉱区の調査権を得てから採掘権を得るまでに2年間が費やされた。この要因は、同州政府が、他鉱山での現地企業(オーストラリア企業)の採掘開始を優先にしていたためであった。鉱区獲得ではリオティント社が外国企業であることが不利に働いた。後にリオティント社が現地企業(コンソリデイティッド・ジンク社)と合併することで、州政府との交渉が進展した。したがって、鉱区獲得のカギは経営の現地化であった。(3)については、リオティント社がカイザー社の製鋼技術の導入を州政府との交渉材料にしたこと、コンソリデイティッド・ジンク社との合併により、同社と提携関係にあったカイザー社が鉄鉱石事業にも参加したこと、オーストラリアのナショナリズムを利用して鉄鉱石鉱山に対するカイザー社の50%持ち分という要求を拒否することができたことが明らかになった。鉄鉱石事業参入では、現地企業との合併が大きな転換点であったことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
英豪資源企業リオティント社の競争力研究において、鉄鉱石事業については、計画時の分析枠組みを利用して、競争力の要因を明らかにすることができた。しかし、計画時には年間2事業の資料収集と分析を予定していたが、資料収集に十分な時間を確保することができなかっため、1事業(鉄鉱石事業)の分析を行うにとどまった。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は、23年度に十分に行なえなかった資料収集を確実に行う。24年8月には、ロンドンのリオティント社において同社の銅事業についての資料収集を行い、25年2月には、同社において石炭事業の資料収集を行う。さらに、25年3月には同社においてオーストラリア企業との合併についての資料収集を行う。第3の資料収集は、リオティント社の鉄鉱石事業の競争力要因であった現地化についてさらに研究を深める目的で行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は、予定通りの研究費の支出に加えて、23年度の遅れを取り戻すため、繰越金を利用して追加の資料収集を行う。24年度の予定通りの使用部分は、国内文献調査費16万円、外国資料調査費84万円(42万円×2回)である。さらに繰越金の使用として、外国資料調査1回(費用26万8384円)を行う。
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