研究課題
最終年度である平成25年度は、リオ・ティント社に関する本格的な史料収集を行い、次のような研究成果を得ることができた。以下は1950年代・60年代の状況である。(1)資源の買い手である日本企業との関係。リオ・ティント社の西オーストラリア州での鉄鉱石開発では、日本からの需要がなければ大規模な開発はできなかった。南ローデシアでのニッケル、南アフリカの銅、磁鉱鉄、カナダの鉄鉱石などでも、日本企業の資源需要が開発の前提となっていた。日本企業の資源需要は、リオ・ティント社の資源輸送体制と資金調達へも大きな影響を与えた。西オーストラリアの鉄鉱石では、日本の鉄鋼企業の要請により大規模な港湾建設が行われ、日本企業との鉄鉱石輸出長期契約が鉄鉱石開発にあたっての大手米銀の協調融資を可能にした。(2)鉱区の売り手との関係。鉄鉱石の事例では、鉱区の売り手である西オーストラリア州政府が強い交渉力を持っていた。リオ・ティント社は、すでに経営の現地化(オーストラリア子会社への権限移譲)を進めていた英資源企業コンソリデイティッド・ジンク社と合併することにより経営の現地化を進め、州政府に対応した。(3)競合企業との関係。リオ・ティント社とコンソリデイティッド・ジンク社は合併以前からオーストラリアでのウラン開発、カナダでの資源調査・資金調達などで協力関係にあった。(4)代替品供給者との関係。アルミと鉄鉱石では相互参入が進んだ。アルミ製錬と製鋼の両部門をもつアメリカのカイザー社との提携関係が、リオ・ティント社の西オーストラリア州での鉄鉱石鉱区獲得に貢献した一方で、リオ・ティント社のアルミ事業への参入も進めた。したがって、1950年代・60年代については、交渉相手・競争相手との協調関係が資源企業の競争優位の要因であったことが明らかにされた。70年代は協調から対立への移行期であり、さらなる検討が必要となった。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件)
Discussion Paper, Tohoku Economic Research Group
巻: No.302 ページ: 1-11