研究課題/領域番号 |
23730323
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小堀 聡 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (90456583)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 日本経済史 / 産業技術史 / 公害史 / 地域開発 / 国土開発 |
研究概要 |
現在、日本の製造業は世界的にみて優秀な省エネ・低公害技術を有する。こうした技術形成の要因としては、石油危機を契機とする技術革新が指摘されてきた。だが、石油価格高騰時に省エネ的な技術革新が模索されることと、それに成功しえたこととは峻別される必要があろう。そして、成功要因を解明するには、石油危機以前の段階における日本の到達点が分析されねばならない。この際、省エネ技術が低公害技術とは必ずしも両立しないことにも注意が必要である。 そこで、本研究では、日本の省エネルギー・低公害的な技術革新の進展について、戦間期以降を視野に入れた歴史的実証研究を行なっている。具体的には、(1)省エネルギー・低公害化に関する産業技術史的研究、および(2)低公害化に関する地方自治体史・住民運動史的研究である。 まず、(1)省エネルギー・低公害化に関する産業技術史的研究、について。省エネ技術に関しては計測管理をとくに取り上げ、高度成長期を中心とする計器産業の発展過程を追跡した。具体的には、社史・業界誌・パンフレット類の収集を進め、その分析も開始した。収集方法は機械工業図書館など専門図書館の利用や古書店からの購入によっている。また、省エネ技術・低公害化技術の双方に関連する政府機関として資源調査会に注目し、その活動や関連人物についての資料収集・分析を開始した。収集方法は東京大学経済学図書館・京都大学の各図書館など専門図書館の利用によった。 (2)低公害化に関する地方自治体史・住民運動史的研究、については、臨海工業地帯造成に関する国土計画や地域開発計画(とくに横浜・四日市・北九州)などについての分析を開始した。また、1920-60年代の公害史・住民運動史について基礎的な文献の収集を進めた。収集方法は土木学会土木図書館・横浜市史資料室などアーカイブスの利用や古書店からの購入によっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、(1)省エネルギー・低公害化に関する産業技術史的研究については、調査研究の進展を通じて、省エネ技術・低公害化技術の双方に関連する重要な主体として資源調査会に注目することができた。戦後復興期に設立された資源調査会は、鉄道電化や熱管理などエネルギー節約技術の革新を啓蒙するとともに、副生ガスの利用による資源節約と大気汚染防止の両立など、低公害化にも関心を払っていた。そこで本年度は、資源調査会の公刊した資料やその作成に大きく関与した技術官僚(安藝皎一・大来佐武郎・内田俊一ら)の論稿の収集・分析を実施した。こうした作業により、戦後復興期において省エネルギー・低公害化技術がどのように構想されていたのか、またこれらが高度成長期以降どの程度実現したのかについて、一定の分析視角を得ることができた。この点については、当初予想以上の進捗を実現することができたと評価できる。 また、省エネ技術に関連しては、計器産業の分析を進めた。ただし、当初戦間期・戦時期の分析を予定していたものの、実際には高度成長期の分析を行なった。これは、当該期に関する資料調査が比較的容易だったことによる。一方、当初今年度での研究を予定していた、熱管理から低公害技術への技術移転については、資源調査会についての研究を先に進めた影響で、予定通りの進捗をみることができなかった。この点については、次年度に研究を進めたい。 (2)低公害化に関する地方自治体史・住民運動史的研究については、公害問題にも関連する主要な地域開発計画(北九州・横浜・四日市など)や国土計画、公害史・住民運動に関する主要な資料の購入など概ね予定通りの進捗をみることができた。 以上の諸状況を総合すると、本年度の研究進捗状況は、おおむね順調であったと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度における研究の推進方策は以下の通りである。 (1)省エネルギー・低公害化に関する産業技術史的研究、については、高度成長期の計器産業・計測管理についての分析をさらに進めるとともに、戦間期から戦後復興期にかけての分析を開始する。また、熱管理から低公害技術への技術移転についても、鉄鋼などを事例として、調査を進める。また、資源調査会についても資料の精読、関連する技術官僚の論稿の収集・精読を実施する。具体的には、機械工業図書館・東京大学経済学図書館・横浜市史資料室などすでに利用経験のある機関での資料収集をさらに進めるとともに、企業・業界団体(日本電気計測器工業会など)に関連する資料の調査を実施する。これらのうち資源調査会に関連する研究については、学会報告および論文の執筆・投稿を行なう。 (2)低公害化に関する地方自治体史・住民運動史的研究、については、関連する研究や地域開発・公害対策・住民運動などに関する自治体史・回想録の消化を進める。さらに、問題を独力で解決した事例として北九州に注目し、これを対象とした調査を本格的に開始する。地元企業・自治体・住民運動に関して、図書館・博物館等での資料収集・聞き取りを実施する。 ついで、平成25年度以降における研究の推進方策は以下の通りである。 (1)省エネルギー・低公害化に関する産業技術史的研究、については、前年度までの研究をさらに継続するとともに、研究内容の学会報告・査読誌への投稿を行なう。また、(2)低公害化に関する地方自治体史・住民運動史的研究、については北九州に関する研究を継続するとともに、問題解決を地方自治体独力ではできず、法廷闘争に至った事例(千葉・四日市など)にも着目し、比較史的研究を実施する。また、(1)、(2)の両研究内容について、論文ないしワーキングペーパーを和文・英文双方で作成することで、情報発信を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画では、平成23年度に、熱管理から低公害化への技術移転と地方自治体・住民運動とに関する資料調査を北九州市において実施することを予定していた。しかし、資源調査会についての資料収集・研究を優先させる必要が生じた結果、熱管理から低公害化への技術移転についての基本的な情報収集をなしえなかったため、23年度内の調査を見送った。そのため、平成23年度には48,125円の残額が生じた。 平成24年度における研究費の使用計画は以下の通りである。 まず、(1)省エネルギー・低公害化に関する産業技術史的研究について。資源調査会については、基本的な資料集(経済安定本部戦後経済政策資料ほか)の購入、東京(東京大学経済学図書館、国会図書館など)や横浜(横浜市史資料室)での調査旅費や資料の複写費・マイクロフィルムへの撮影費(外注)などに充てる。また、計測管理・計器産業史については東京(上記図書館のほか企業・業界団体等を予定)への調査旅費に、熱管理から低公害化への技術移転については東京のほか23年度に中止した北九州市(公立図書館や北九州市環境ミュージアムなど)での調査旅費に充てる。 ついで、(2)低公害化に関する地方自治体史・住民運動史的研究、について。地域開発や国土計画など地方自治体史に関することとしては、基本的な資料(国民経済研究協会戦後復興期経済調査資料ほか)の購入、東京(土木学会土木図書館や市政図書館、国立国会図書館憲政資料室・議会官庁資料室など)や各地の公立図書館などでの調査旅費に使用する。また、住民運動史については、代表的な回想録などの購入や複写費、北九州市での調査旅費などに充当する。 以上のほか、(1)(2)の双方に関連して、関連する研究書の購入、古書籍の購入、資料整理用のフォルダー・製本の費用などにも充当する。
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