現在、日本の製造業は世界的にみて優秀な省エネ・低公害技術を有する。こうした技術形成の要因としては、石油危機を契機とする技術革新が指摘されてきた。だが、石油価格高騰時に省エネ的な技術革新が模索されることと、それに成功しえたこととは峻別される必要があろう。そして、成功要因を解明するには、石油危機以前の段階における日本の到達点が分析されねばならない。 そこで、本研究では、日本の省エネルギー・低公害的な技術革新の進展について、戦間期以降を視野に入れた歴史的実証研究を行なった。具体的には、(1)省エネルギー・低公害化に関する産業技術史的研究、および(2)低公害化に関する地方自治体史・住民運動史的研究である。 (1)省エネルギー・低公害化に関する産業技術史的研究、については、計器産業の動向、熱管理・省エネ団体機関誌の変遷、エネルギー多消費産業の社史類の内容などを分析し、技術者の関心や技術者への社会的要請がどのように推移したのかを追跡した。分析内容の一部は国際会議にて報告したのち、ディスカッションペーパーとして公表した(いずれも26年度)。また、その修正原稿が英文編著書の一章として公表予定である。 (2)低公害化に関する地方自治体史・住民運動史的研究、については、臨海開発に関する地域開発計画や住民運動に関する資料調査・分析を実施した。これらのうち、横浜市については公開講座およびその報告集などで研究成果を公表した(いずれも26年度)。また、北九州市についても、その成果の一部を、英文編著書の一章中で公表予定である。 また、省エネ技術・低公害技術の双方に関連する政府機関として資源調査会に注目し、研究成果の一部を論文2本などで公表した(25年度および26年度)。
|