研究課題/領域番号 |
23730325
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
尾関 学 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (90345455)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 経済史 / 戦前日本 / 農村・農家経済 / 村民所得 / 統計調査史 |
研究概要 |
本研究は、明治・大正期農村経済への数量的アプローチとして、「一村を一家とみなし」、その収入と支出とを捉える調査である町村是を利用した、村民所得の推計を最終的な目的とする。しかし、研究のもう一つの柱として、従来の日本経済史研究であまり重視されてこなかった消費の研究も合わせて進めている。 平成23年度は、山梨県の村是を用いた村民所得推計の研究の一端を公刊された研究報告集に掲載した。まず村民所得の分析では、大正初期の山梨県の二村の町村是を利用し、村民所得を推計した。さらに町村是の記載データを現在の国民経済計算の概念に沿う形に再構成し、二村の村民経済計算のパイロットスタディをすすめた。また、当時の消費構造の分析として消費の二形態、すなわち日常生活の「ケ」と冠婚葬祭の「ハレ」における食料摂取カロリーの違いについて分析した。 本研究の中心的役割を果たすのが、島根県町村是のデータベースの構築と村民所得の推計である。データベース作成ではデータを入力することが必要となるが、そのデータがどのような性質を有しているか確かめる必要があるため、まず島根県町村是の調査標準を分析することをすすめた。島根県では、町村是調査に際し、調査マニュアル(調査標準)を作成しており、この調査標準の分析を進めた。合わせて、データの入力も順次進め、順次データのチェックを行った。また、本研究は、西日本を対象に分析をすすめることを目的のひとつとしており、平成23年度は、マイクロフィルム版町村是(九州版)を購入した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、山梨県の村是を用いた村民所得推計の研究の一端を公刊された研究報告集に掲載した。この報告論集は英文で執筆されており、海外の研究機関へも送付された。それにより、利用価値のある資料として国内で知られていた町村是の利用価値の一端を海外にも伝える一助となったであろう。 本研究の中心的役割を果たすのが、島根県町村是のデータベースの構築と村民所得の推計である。データベース作成ではデータを入力することが必要となるが、そのデータがどのような性質を有しているか確かめる必要があるため、まず島根県町村是の調査標準を分析することをすすめた。島根県では、町村是調査に際し、調査マニュアル(調査標準)を作成しており、この調査標準の分析を進めた。合わせて、データの入力も順次進め、順次データのチェックを行った。 また、本研究は、おもに西日本の地域を対象に分析をすすめる。平成23年度は、マイクロフィルム版町村是(九州版)を購入した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は島根県のデータベース形成を進める。そして、資料論分析では、島根県の町村是調査標準(町村是の調査マニュアル)の検討を進める。また、最初の町村是調査が行われた福岡県の町村是調査標準を検討し、島根県の町村是との比較可能性について、検討を進める。データベース作成は、島根県町村是のデータベースを完成させ、実際にデータを利用しながら、データベース上の問題点を確認し、改善をすすめる。そして、追加的に入力する予定である福岡県のデータベースに改善点を反映させる。なお、ここでの作業は蓄積型のものであり、多少の進捗のずれが生じる可能性があることを先に指摘しておきたい。 平成25年度は、島根県町村是のデータベースを用いて、1890-1910年代の農村の基礎データとしての村民所得の推計をすすめる。その結果の一部を研究会で報告し、所属研究機関のディスカッション・ペーパーとしての刊行を目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、データベース形成に利用するPCおよび数量分析ソフトを購入する。そして、日本経済史関連文献を購入する。 本研究では、データベースの形成を基盤としている。さらに、日本全体および地域間の比較分析を視野に入れている。よって、特にデータ、歴史資料の入手が問題となる。その費用はデータベース形成のため若干大きくなるが、我が国において歴史資料は、インターネットから入手できない状態が続いているため、資料調査のための旅費として使用する。 平成25年度は、福岡県町村是のデータ入力を進めるため、PCを追加的に購入する。なお、ここでの作業は蓄積型のものであり、多少の進捗のずれが生じる可能性があることを先に指摘しておきたい。合わせて、日本経済史関連文献を購入する。さらに、専門的知識の提供として、勤務大学において外部の研究者の研究報告を依頼したい。これは、岡山という周辺に研究者が少ないという立地状況から、研究交流のために必要であると考えられる。
|