研究課題/領域番号 |
23730326
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
古賀 大介 山口大学, 経済学部, 准教授 (50345857)
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キーワード | クリアリングバンク / ユーロダラー |
研究概要 |
本年度は、本研究において特に重要と思われる1950-1970年代のユーロダラー市場の発展とイギリス・クリアリングバンクの関係について集中的な検討を行った。先行研究を見る限り、クリアリングバンクが1950-1960年代ユーロダラー市場の発展に大きく寄与したという事実はごく一部の一時期を除き、これまでのところ確認されていない。 これを踏まえ、①本研究では1950-1960年代のクリアリングバンクは何ゆえ同市場に大きなコミットメントを持たなかったのか。また、②本当にコミットメントを持たなかったのか。③ユーロダラー市場への本格参入はいつ、いかなる方法で行われたのかなどを、最近の研究動向ならびに今年度新たに収集した各銀行アーカイブ所蔵史料等から検討した。 ①に関しては、イギリス大蔵省・イングランド銀行が1968年のポンド危機まで「ポンド維持・復権政策」を堅持していたこと(金井雄一氏)を念頭に、その影響下にあるクリアリングバンクがユーロダラー市場での直接的な活動を自重していたのではないかとの仮説を立て検証した。②に関しては、クリアリングバンクが本体ではなく、規制が及ばない系列海外銀行を通じて間接的にユーロダラー市場に大きなコミットを持っていたことを今回新たに史料的に明らかにした。③に関しては、ポンド維持政策が事実上放棄された1968年以降本店・子会社の大幅な組織改編を行い、ユーロダラーの取り扱いを爆発的に増やしていることを各銀行の経営内部史料より確認した。またほぼ同時にクリアリングバンクが米銀と協力してロンドンにおけるドル決済機構の整備を進めていることも史料から確認した。 来年度以降は、本年度収集した史料を今一度精査した上で、今回新たに発見した一連の史実が持つ歴史的意義、すなわち国際金融センター・ロンドン復活に対するクリアリングバンクの貢献について改めて検討を進めて行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、昨年度新たに修正した研究対象期間(当初の1920-1960年代から1900-1970年代に延長)のうち、ユーロダラー市場・ロンドン外国為替市場の発展期である1950-1970年代に焦点を当てた調査・研究に集中した。この結果、1900-1940年代の研究が手薄となった。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、本年度予定していた、クリアリングバンクの国際業務(外為業務)の萌芽期である、20世紀初頭における本店・外国部の設置ならびにコルレス業務に関する論説のとりまとめを急ぐ。また、本年度、収集し、現在分析途上である史料を元に、9.で述べた研究成果(1950-1970年代)のとりまとめを行う。更に、1920-1940年代におけるクリアリングバンクの国際業務の資料調査を、各継承銀行アーカイブにて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も引き続きロイズ銀行をはじめとする各クリアリングバンクの経営内部資料の調査を行うため、渡英のための旅費を計上する。また、来年度も、名古屋大学金井雄一教授、東北大学菅原歩准教授など隣接分野の研究者との意見交換・勉強会に参加するため、国内出張旅費を計上する。
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