本年度もイギリスの金融諸機関において新たな資料収集を行いその分析に従事した。昨年度(平成24年度)は1950-1970年代の史料収集分析に力をいれていたため、本年度は相対的に手薄となっていた1900-1940年代を中心に行うことにした。クリアリングバンクの1つであるロイズ銀行アーカイブでは、1910年代において同行外国部が海外(イタリア・ベニス)に外貨建て預金を保有していたことを示す史料も合わせて発見した。これまでの研究史では基軸通貨国イギリスのクリアリングバンクは第一次大戦前外貨建て預金を持たないとされてきたが、申請者が以前発見したミッドランド銀行に続き、ロイズ銀行もまた外貨預金を戦前持っていたことが新たに確認された。更に1930年代における同行外国部における外貨建て預金額を示す史料を発見した。両大戦間期クリアリングバンクが外貨預金を持っていたと推定されているが、これを史料的に裏付けるものがこれまでなかったので、これも新たな発見である。 また、これまで個々のクリアリングバンクの視点から外国為替業務に関する史料収集を行っていたので、よりマクロ的な視点からの調査を行うべく、中央銀行であるイングランド銀行の史料室にて、第一次大戦前から両大戦間期におけるロンドン為替市場の変遷に関する史料、1930年代における外国為替市場の組織化を示す史料を入手した。これらを通じて両大戦間期よりクリアリングバンクがブローカー経由ではなくロンドン外国為替市場に直接コミットする様相を改めて確認できた。また、イングランド銀行の保有史料からも、1930年代のクリアリングバンクが外貨預金を受け入れていることを裏付けられることを確認した。
|