研究課題/領域番号 |
23730329
|
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
中島 裕喜 東洋大学, 経営学部, 准教授 (50314349)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
キーワード | GHQ民間通信局 / 電気通信産業 / 研究開発 |
研究概要 |
1.GHQ民間通信局の史料の状況を調べるために、まず『GHQ指令総集成』に記載のSCAPINを確認し、そのなかから発出が民間通信局となっているものを検討した。民間通信局が日本政府に出したラジオ生産指令や研究中止命令などのコピーを入手。次に『国立国会図書館所蔵GHQ文書目録』から必要なものを選定し、それを国立国会図書館にて閲覧した。膨大なマイクロフィッシュのなかから今年度は民間通信局の概要を知るために、組織、人事に関する史料をまず手に入れ、また民間通信局が当時の商工省電気試験所を改組することを提案し、商工省側の駒形作次などと共同チームで検討を加えた、改革案に関する資料などを見つけた。内容を詳細に吟味することはまだできていないが、当初は研究所のみの改革案だと予想していたが、日本の電気通信システムを全体的に改革することを提案したものであることが判明した。これらの史料を国会図書館憲政資料室で閲覧した後、予算の範囲で入手可能なもの1000ページ分の複製を作成した。2.これとは別でGHQ民間通信局がラジオ行政について発出した様々な指令について調べるために、すでに入手していたマイクロフィッシュを約30枚分、ページ数にして3000枚分のスキャニング作業を完了した。これはニチマイに業務委託したが、結果的に本年度の予算を最も多く消費した。研究費の効率性からいうと次年度からは別の方法にてスキャニング作業を行うことが望ましいと思われ、検討する予定である。3.上記の入手資料の吟味は次年度以降の課題であるが、さしあたり入手した文献のなかで「Summation of Non-military Activities」というGHQの報告月報からGHQ民間通信局がラジオを民主化の道具として利用し、普及を進めるべきであるという考えをもっていたことが判明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標はGHQ文書のなかから必要と思われるものを選定する作業、ならびにそれを入手して研究に使用できるようにスキャニングを進めるということであった。その作業については全てではないもの比較的順調に進んだものと考えている。GHQ文書は膨大で、かつ系列がいくつかに分かれており、その読み方を勉強するところから始めたので、最善の選定方法がわからないまま着手したが、まず調査対象である民間通信局そのものの概要を知る必要があるという考えのもと、それに関する史料を見つけることに努めた。日本側のいくつかの文献のなかで当時の民間通信局について記されたものによると、多くの技官はベル研究所から派遣されていたことがわかる。一例であるが当時の最新技術であるトランジスタの情報がこういう人々から伝えられたことを考えると、民間通信局を構成している人材についてより検討を加えることが重要ではないかと考えるようになった。ただし必要な史料は他にもたくさん存在するが、内容については1件ずつ確認するしかなく、より多くの時間を本研究課題に費やす必要性を痛感した。
|
今後の研究の推進方策 |
1.研究計画を提出した時点で想定されていなかったことであるが、2012年度は所属先研究機関から1年間の在外研究の機会を与えられ、イギリス・ロンドンのインペリアル・カレッジ・ロンドンで研究することになった。同大学所属の科学技術医療史研究センターに籍を置いて、科学技術史関係の史料を閲覧することができるため、それを踏まえて研究を推進することになる。具体的には当該研究計画が対象としている戦後復興期の重要トピックである占領側から日本への技術情報の伝播の問題を取り上げるが、まずはイギリスにおいて科学技術政策がどのように形成されていたのかを検討したい。例えばイギリス公文書館に所蔵されている史料を閲覧することも重要な作業となる。2.一方で研究計画に記していた、第2年次の予定では前年度に入手したGHQ文書の内容を検討することになっていた。本研究が史料をスキャニングすることに重きを置いていた成果であるが、すでにスキャニングを完了した史料は上記のとおり全体で4000枚にのぼるが、これらをロンドンにデータとして持ち運ぶことができたため、引き続き読解する作業を実行することが可能である。ただし、上記1の課題との時間配分によっては作業が必ずしも十分に進まない可能性もあり、その場合は第3年次に持ち越すことになる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1.本年度はイギリスに在住するため、国立国会図書館のGHQ文書を閲覧する作業は中止する。したがって、それへの費用が発生しない予定である。2.他方でイギリスで研究活動を継続するために必要な各種の消耗品(パソコン、プリンター、スキャナー、ハードディスクなど)の購入が必要である。3.イギリス公文書館での資料閲覧および複写費用が発生する。4.今年度はヨーロッパ経営史学会での報告があり、パリへの渡航費が発生する。
|