研究課題/領域番号 |
23730329
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
中島 裕喜 東洋大学, 経営学部, 准教授 (50314349)
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キーワード | イギリス / 科学技術政策 |
研究概要 |
本年度は所属研究機関(東洋大学)より在外研究の機会を与えられたため、調査および研究をロンドンにて実施した。研究課題「戦後改革と日本企業における研究開発の再編」に重要な影響をあたえた米・英の科学技術史の一端を明らかにすべく、主としてイギリス政府によって第二次世界大戦後に実施されたドイツ占領地域の技術情報収集の動向を調査した。イギリスの工科系の大学であるインペリアル・カレッジ・ロンドンの科学技術医療史研究所のデビッド・エジャートン教授(個人名の明記について先方の許可を得ている)の示唆により、同大学が提携している科学博物館(サイエンス・ミュージアム)図書館に所蔵されている、英国政府のが発行した技術レポートを取り寄せ、その中からドイツの研究開発組織に関する調査とエレクトロニクス産業に関する調査のレポート30点以上を閲覧し、全ページをデジカメ撮影することができた。 また英国国立公文書館でも資料調査を行い、政府関係資料を数十点閲覧し、その多くをデジカメで撮影した。これらの多くは日本ではまったく紹介されたことがなく、イギリスにおいても正面から論じた研究は少ない。その意味で大変重要な資料の収集を行うことができたと考えている。本格的な資料の読み込みは次年度になるが、これによってイギリスがアメリカとともに終戦直後にドイツからどのような技術情報を手に入れ、またそれは両政府のどのような組織によって実行され、さらに産業界のなかでこの調査を政府に強く働きかけた人々の動向が明らかになると期待される。 他方で、日本のエレクトロニクス産業の研究開発について英語論文を執筆し、フランス・パリで開催されたヨーロッパ経営史学会の年次大会で研究報告を行った。これは研究課題の主題である日本企業の実用化研究の優秀性を論じたもので、高度成長期の電子部品メーカーを事例とした内容である。以上のような研究を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究の目的」では日本の電気通信産業を事例として、戦後改革期の研究開発の再編過程を考察する旨を記載した。平成24年度は研究代表者がイギリスで研究活動を継続したため、日本国内における資料調査を十分に進めることができなかったという反省点がある。 しかしながら、一方で日本の科学技術体制に大きな影響を与えた第二次世界大戦の戦勝国、とりわけアメリカとイギリスの動向を把握することは本研究課題を達成するうえで極めて重要なことであるため、その意味において貴重な資料の収集に成功したと評価できる。また当初の研究計画よりも広い視野から本研究課題を捉えなおすことができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度においては国立国会図書館憲政資料室に所蔵されているGHQ文書のなかで民間通信局(CCS)に関連する資料を大量に入手した。続いて第2年目には上述のようにイギリスの図書館や公文書館で各種の資料を入手することができた。したがって、まずはこれらを踏まえた論文の執筆を進めることにしたい。 また日本の電気通信産業に関して、ひきつづき国会図書館やNTTによって運営されている「ていぱーく」に所蔵されている資料を本格的に調査することが平成25年度の課題となる。 なお平成24年度においては当初予定していた研究費配分額50万円を使い切ることが できず次年度に繰り越すこととなった。その理由は主としてイギリスにおいて資料調査を行ったことによる。イギリスの公文書館や図書館では資料をデジカメで撮影することが許されているため、当初予定していた複写代金が発生しなかったためである。この繰り越した研究費は平成25年度において使用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度においては資料調査を踏まえた論文執筆を開始する予定である。その際にイギリスやアメリカの研究状況を知る必要がでてくると思われ、各種の研究書籍や資料類を取り寄せ、複写することになる。 またGHQ文書については国立国会図書館所蔵のマイクロフィッシュの状態が良くないものが散見され、文書内容を正確に把握するためにはアメリカ・メリーランド州の国立公文書館で現物を閲覧する必要があると思われる。そのための旅費として使用することになる。 さらに英語論文を執筆するに際しては英文校閲を依頼する必要があるので、これにも研究費が使用される予定である。
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