研究課題/領域番号 |
23730330
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研究機関 | 映画専門大学院大学 |
研究代表者 |
平山 勉 映画専門大学院大学, その他の研究科, 准教授 (20306864)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 地域経済 / 株式市場 / 日本経済 / 南満州鉄道 / 株主 |
研究概要 |
まず、『富山県史』『富山市史』『高岡市史』などの地方史資料を購入の上、特に近世から近現代にかけての基本的史実の整理・理解に努めた上で、『富山県郷土資料総合目録』などを基礎に資料調査を進めた。 その上で、フェーズ1のミッションである、富山県内の会社と株主の全数把握に入った。その第一は富山法務局での資料調査とインタビューである。その結果、戦災による焼失は回避されており、明治以来の登記簿が保存されていることが判明した。しかし、アクセス可能な登記情報は現存する会社の最新版だけである。増資・減資・解散などがなされるたびに、最新版が登記簿にアップロードされ、それまでの版は「廃棄」されて、月別にファイルされていた。この月別ファイルを閲覧することは許されておらず、会社名と増資などの年月日を確定した上で、「廃棄」された旧版について1件々々、閲覧申請する必要がある。 そこで、『富山県会社工場要覧』(1923年)や『富山市商工人名録』などを調査して、当該期の会社をリストアップする作業に入った。同時に、不二越・広貫堂・立山製紙・富山化学・富山地方鉄道などの有力会社のほか、細川機業・林建設・品川グループ・高岡ガスなど地場会社の社史を調査して、増資・減資などで年月日の把握に努めた。しかし、これでは全数把握は不可能である。さらに資料調査を進めると、区裁判所による商業登記公告(設立・増資・減資・解散などを告知)が『北陸タイムス』『富山新報』などの地方紙に掲載されていることが分かった。高岡市立中央図書館では、明治以来の富山地方紙のデジタル画像(北日本新聞協力)を閲覧するができるため、ここでコピーを取りつつ、データベースを構築している。 また、地場会社である戸出物産の株主名簿など、公開されていない資料を古書店経由で収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最大の懸案であった登記情報について、全数把握が可能となった一方で、全株主の把握については資料収集が不充分であるため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、大株主ではなく、公務員・商工業者・労働者など、中小株主の投資選好を分析するフェーズ2を進める。 23年度の資料調査と同時並行で、常願寺川の大規模公共事業の拠点となった立山、一大漁港であった氷見、高岡銅器業を支えた城端線沿線の町村においても、現地調査と資料調査を進めてきた。その際に痛感されたことは、カネ・ヒト・モノ、そして、情報の流れがこれまでの地方史研究では十分に解明されていないことであった。フェーズ2では、当該期富山県内の「産業連関」をふまえつつ、『富山県副業調査資料』の分析などを通じて、富山県経済での地場会社への株式投資を把握する。 また、現状では地場会社の株主名簿の収集が不完全であることに鑑みて、中間層上層を形成したと思われる人物の住所と氏名が判明する、「名鑑」の収集に注力する。すでに入手できているものとして、『富山県売薬業者名鑑』(下)・『富山県名鑑』・『富山県満蒙開拓団史』などが挙げられる。これらと富山県満鉄株主の個票から作成したデータベースとの「名寄せ」によって、不足を補う準備を進めておきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
「\-8,792」は、古書店からの資料購入費と旅費がかさんだことによる。24年度以降は、工夫をしてコストダウンを実現したい。 なお、北日本新聞社による新聞DVDは、高岡市による公共事業として進められたとのことであるが、このDVD群を可能ならば「購入」したいと考えている。
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