研究課題/領域番号 |
23730332
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
田原 啓祐 大阪経済大学, 付置研究所, 研究員 (50411393)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 日本経済史 / 日本経営史 / 公共事業史 / 郵便 / 通信 / 情報ネットワーク / 交通 / 郵政事業史 |
研究概要 |
大正期・昭和初期における郵便事業を検討するとともに、日本郵便事業についての総括的研究の準備を進めた。 第1次大戦期を含む大正期は、明治期同様依然として郵便利用が拡大する時期であった。大正期は田舎から都市への人の移動が激しく、いわゆる都市化の時代であった。都市化により、家族、友人、商売仲間等親しい間柄にある人間関係において地理的に距離が生じた状況下において、明治後期と比較して郵便利用の質・量にいかなる変化が生じたのかについて検討した。また昭和初期は、大正期から一転して郵便事業の危機的時代と言われ、郵便利用が停滞し、郵便事業収支も悪化した時期であった。郵便利用が停滞したのはなぜなのか、またこの危機的状況において、逓信省はいかなる対策をとったのかについて検討した。 また一方で、宿駅制度の廃止から近代郵便制度の創設にあたって官営独占、均一料金制の成立の経緯についても検討し、郵便の父と呼ばれる前島密は、郵便事業運営について単なる官営主義者ではなく、運輸部門の一部を民間に委ねるなど、合理的思考の持ち主であったことを研究会において報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「戦前期における郵便事業政策の展開」をテーマとする研究は、交付申請時には2年目の研究課題としていたが、郵政資料館が主催する「郵政資料館の所蔵資料を活用した郵政の歴史・文化に関する研究会」(略称・郵政歴史文化研究会)との連携による研究が順調に進んだため、本研究の成果を先に進めることにした。 日本郵政株式会社郵政資料館に所蔵されている、逓信省の業務成果を年毎にまとめた部内報『逓信省年報』や統計資料『通信統計要覧』、布達書や「逓信公報」、逓信省の機関誌である『逓信協会雑誌』、当時の通信・運輸事業運営の指針を論じた雑誌『交通』、新聞記事を検討することによって、当時の社会背景にも注目しながら、大正・昭和初期(両大戦間期)の郵便事業政策の特徴を明らかにすることができた。また、郵政資料館や地方郵便局に残っている地方郵便局史料の収集を進め、これらの史料を通して、同時期における地方における郵便事業および郵便局の動向も検討することができた。 本年度の研究により、論文2本、研究報告書1本、講演1回を研究成果として出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究は、郵便事業政策の検討や郵便サービスの提供者(逓信省・郵便局)側を対象としたものであった。本年度は郵便サービスの需要者(利用者)側から本格的に検討する。 姫路市史編纂室や兵庫県姫路市網干地域のフィールドワークによって得られた兵庫県の商家・土井勘次郎家所蔵の通信史料(書簡約2,000通、葉書約12,000通、電信約850通、新聞雑誌少数)を分析することによって、明治末期から昭和初期までの土井家の郵便による交友範囲、郵便・電信利用の動向および特徴を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
兵庫県の商家・土井家の史料調査を引き続き行い、現地のフィールドワーク活動(聞き取り調査)や、関連する史料の収集・分析を並行して進めていく必要がある。また、本研究が一地域、一商家の個別事例研究にとどまらず、ある程度の普遍性をもたせるために、同時期の他地域の商家事例として近江商人の情報行動も視野に入れて検討したい。本年度の経費は、研究活動に要する設備備品費(史料収集活動に必要なデジタルカメラ、交通史通信史関係書籍・古文書購入費)、史料調査・フィールドワークにかかる国内旅費(主に近畿地方を中心とする史料調査活動に要する費用)、および史料収集活動にかかるその他費用(写真撮影・現像費用)が主となる。
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