日本において郵便事業が早期に普及した要因、郵便制度の発達と経済社会全体の発展に与える影響を明らかにすることを研究テーマとして研究を進めてきた。最終年度に実施した研究の成果は以下の通りである。 2011年11月に情報通信文明史研究会(情報通信学会)において講演した内容に基づき、日本において郵便事業が創業そして確立していく過程で、いかなる問題に直面し、また対応していったのかを辿ることにより、現在進められている「郵政改革」、「郵便局のあるべき形」を考察した。その論考は、情報通信文明史研究会編『情報通信の温故知新―情報通信の文明史』公益財団法人情報通信学会発行,2012年6月に掲載された。 また、郵便歴史文化研究会(逓信総合博物館主催)と提携して研究を進め、「関東大震災後における逓信事業の復旧と善後策」『逓信総合博物館 研究紀要』(公益財団法人通信文化協会)第4号,2013年3月を執筆した。2011年3月11日に発生した東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)は、東北地方と関東地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害を与えた。その中にあって、郵便局窓口は早期に再開し、避難所配達、各地からの車両型郵便局、郵便バイクの調達など、郵便事業は早急に善後策を立て、被災者へのライフラインを構築した。震災に対する迅速な対応は、これまで日本が過去幾度となく遭遇した災害対策の経験と知識が大きな財産となっていると思われる。本研究では、比較的史料が残っている関東大震災(大正12年9月1日)当時の逓信事業の対応およびその後の復興過程をみていくことにより、震災への対応策の確立過程を検討した。 以上の研究により、大正期・昭和初期における郵便事業を検討することができ、戦前期全体の日本郵便事業についての総括的研究を進める基礎が確立することができた。
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