研究課題/領域番号 |
23730333
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
岩間 剛城 近畿大学, 経済学部, 講師 (30534854)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 上塩尻村 / 農村金融組織 / 永続講 / 銀行 |
研究概要 |
本研究の目的は、日本の近代化=市場経済化過程において、農村社会で多数形成されていた農村金融組織について、その構造・性格・歴史的変容を実証的に明らかにしようとするところにある。そして、近世・近代村落史研究の成果を踏まえつつ、これまでの日本金融史研究では別々に論じられる傾向が強かった、近世金融史と近代金融史を連続的・実証的につなごうとする、新たな試みである。研究対象とする地域は、近世期に全国有数の蚕種商人を輩出した、信濃国小県郡上塩尻村を中心とする信濃国上田地方である。 本研究では上記の研究目的を達成するため、初年度である平成23年度の研究活動においては、ノートパソコン・デジタルカメラ・記録メディアを購入・利用して、主に長野県上田地方において、金融講・銀行に関する古文書史料調査を行った。また、東京都港区・熊本県小国町・宮城県仙台市で行われた近世・近代農村に関連する学会・研究会に参加をして、近世・近代の農村社会における金融講・銀行に関連する情報の獲得に努めた。さらに農村金融関連図書・長野地方史関連図書を購入して、過去の金融史・地域史研究においてなされた金融講・農村金融組織に関する議論の再確認を行った。 上記のような資料調査、研究会・学会への参加、書籍に基づく先行研究の確認を通して、近世から近代にかけての信濃国上田地方における地方金融構造の実態に接近しつつ、その特徴を把握することを、積極的に目指した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度には、当初の研究計画に従い、長野県上田市・宮城県仙台市に出張し、近世・近代の農村金融講に関する古文書史料調査を行った。古文書史料の撮影および、作業を通して得られた情報を元にして、信濃国上田地方において形成された永続講の出資・貸付に関するデータベースの作成に着手した。さらに近世・近代の農村社会・農村金融に関する知見を広めるため、東京都港区・熊本県小国町などで開催された近世・近代農村社会に関連する学会・研究会に積極的に参加をした。このような調査や学会・研究会への参加により、近世・近代の農村金融講に関連する情報を獲得することができた。 以上のように、当初想定していた研究実施計画については、ある程度順調に進展したと言える。ただし、長野県上田市立博物館をはじめとして、長野県上田地方に残存している農村金融関連の古文書は、当初に研究計画を作成した時点で想定していたよりも、現存している量は多いことが判明した。そのため、近世・近代の農村金融講・銀行に関する古文書史料の撮影および内容の確認に際して、当初に研究計画を作成した時点での想定よりも、より多くの時間を要することが確実な状況となっている。この点については、長野県上田市立博物館をはじめとして、積極的かつ継続的に史料調査を行うことで対応する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
研究初年度であった平成23年度に行った、近世・近代の農村金融講・銀行に関連する古文書史料調査を、長野県上田地方を中心として、平成24年度も継続して複数回実施する。その際には、平成23年度に行った農村金融講・銀行に関する史料調査の結果状況を踏まえた上で、より一層の史料撮影・情報収集を試みる。そして、継続的に複数回行う予定の史料調査を通じて、追加的に収集した情報を元にして、信濃国上田地方において設立された金融講に関する、出資状況・資金貸借状況に関する永続講データベースの情報充実を図る。 以上の史料調査・データベース作成と並行して、近世・近代農村社会に関連する学会・研究会に継続的に参加し、また農村金融関連図書・長野地方史関連図書の購入も行う。これにより、近世・近代の農村社会における金融講・銀行の形成や展開に関連する追加的な情報の収集に努める。 そして、永続講データベースに蓄積をした情報の分析作業に着手し、その内容の一部を元にして、国内学会・研究会等で研究報告を行うことを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度から継続して、研究対象地である長野県上田市を中心として、5~6回程度、史料調査を実施する。また、国内学会・セミナー・研究会に積極的に参加する。日本経済史の研究者にとどまらず、異分野の研究者から、多様な視野に基づいたコメントを受けるようにこころがけ、より一層の研究の深化を図る。さらに必要に応じて、関連分野の書籍購入も行う。 本研究では実態調査研究が主体となるため、まず第一に研究代表者が、調査対象地である長野県上田市を複数回訪問し、史料調査を行う必要がある。これには、当然ながら多額の経費が必要となる。この他にも、東京をはじめとして、各地で行われる各種学会・セミナー・研究会において、分析手法や分析内容の検討・専門的知識の習得を図ることを考えている。以上の点より、国内旅費が研究費支出の中心となる。
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