研究課題/領域番号 |
23730337
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
相原 基大 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (40336144)
|
キーワード | 産業集積 / 再構築過程 / 準拠枠 / 競争のコンテクスト / ディスコース / メカニズム・アプローチ |
研究概要 |
研究期間の3年目である平成25年度は,主に次の3つの研究活動を展開した. 第1に研究の概念的モデルを洗練した.本研究では,産地内の行為主体が展開してきたディスコースや諸活動および事業慣行に代表される行為主体間の相互作用秩序を手がかりに,産業集積の再構築過程をダイナミックに捉える精緻なモデルが不可欠である.具体的には,史料に掲載されている過去の発言・見解,業界が置かれていた状況に関する認識,具体的な活動の内容などについて,当事者に適宜確認をとりながら,当時に各行為主体が見ていた世界を重ね合わせながら概念モデルの精緻化に取り組んだ.一部の成果はディスカッションペーパーとして公開している. 第2にデータセットのひとつの最適なハンドリング手法を開発した.会議資料や業界紙誌に掲載されている当事者の見解に関するテキストデータから,産地を取り巻く歴史的なコンテクストを量的に把握する手法である.時々の当事者見解という定性的データを量的データの挙動に変換し,長期にわたり産地を取り巻いてきた当地特有のコンテクストを視覚的に把握することで,産地で生起している具体的な事象や現象に関する正確な理解が可能になる.同手法の手続きと適用例に関して,現在論文の執筆をすすめている. 第3に,比較分析に適う理論的サンプリングの基準に沿って,最終的に2業種5産地(国内3産地,国外2産地)を選定するとともに,各産地の記述的研究を進めてメカニズム解明に向けた準備をほぼ終えた.具体的には,各産業集積地のパフォーマンスの挙動にもとづき複数の分析期間を区分して,各期に関して,①国際的な産地間競争の態様,産地の分業構造の変動,関連する行為主体のディスコースや諸活動に関する定性的データと,②産地出荷額,最終製品の小売市場規模,貿易額などの量的データの挙動を照合し,産業集積値の再構築過程に関する詳細な記述的研究を遂行した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1の研究目的である産業集積の再構築過程を捉える概念的モデルの開発に関しては,ほぼ業務を完了した.本点に関して残る作業は,最終的な分析過程で得られた洞察に沿って,モデルの精度を高めることに絞られた. 第2の研究目的である経験的な検証は,今年度(平成26年度)の最も大きな業務である.すでに基本的なデータセットの構築を終え,比較分析に先立つ記述的研究を1産地を除きほぼ終えている.記述的研究の進展が遅れている1産地に関しては,平成25年度の研究過程において,研究遂行上非常に重要な希少な史料を発見した結果,すでに構築したデータセットの改訂が必要になっている状態である.すでに同史料の収集をほぼ終えており,研究計画の執行上大きな問題にはなっていない.
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は本研究プロジェクトの最終年度であり,平成25年度に組み上げた分析の概念的モデルに沿って比較事例分析をすすめ,産業集積の再構築過程に関する統合的なモデルの構築をおこなう.具体的には,(1)適宜,追加的な経験的データの収集をともないながら,比較分析に先立つ各産業集積地に関する記述的研究の完了を最優先し,(2)同作業の終了後に,記述的研究の成果をもとに比較事例分析を試み,産業集積地の再構築過程で作動するメカニズム(機序)の導出をはかる.なお,過年度と同様に,本年度の研究遂行の過程で得られた中間的な研究成果を適宜公開するとともに,本年度末に研究プロジェクトの全体的な成果をとりまとめ公開する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
3月の納品分(書籍および文具)が4月支払いのため,次年度報告になる. 上記の通り,3月納品分に関して4月支払いになっている.
|