研究課題/領域番号 |
23730338
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研究機関 | 小樽商科大学 |
研究代表者 |
保田 隆明 小樽商科大学, 商学研究科, 准教授 (90581546)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | コーポレートファイナンス / エクイティファイナンス / 公募増資 / 第三者割当増資 / 実証分析 / 資金調達 |
研究概要 |
本研究の目的は、我が国におけるエクイティ・ファイナンスに関しての発表前後の株価収益率および増資後パフォーマンスの実証分析を実施し、企業経営者および投資家の利益に資する増資について正しい姿を理解する材料を提供することである。当該年度では主に3つの実績を実現した。まず、第三者割当増資の発表前後の短期の株価反応に関する実証分析を実施し、これについては経営財務研究学会の学会誌に投稿し2012年3月号にて掲載された(査読付き)。査読者からも、我が国における当分野の研究として一旦まとまった研究であるとの言葉を頂き、当分野の研究発展に微力ながら貢献できたのではないかと思われる。 次に、第三者割当増資の増資後のパフォーマンスに関しての分析についての学会発表を行った。この分析は、米国では先行研究が存在するが、日本ではこれまで行われておらず、我が国におけるエクイティ・ファイナンスに関して包括的な理解を提供する上では不可欠であり、学会では討論者、出席者から有意義なコメントを頂いた。そのうえで、論文として取りまとめ学内紀要「商学討究」の2011年12月号に論文として掲載済みである。 3つ目は、公募増資について、発表前後および増資後のパフォーマンスに関しての分析を行い、学会発表を行った。これについては、討論者および出席者からのコメントを受けて、鋭意論文を執筆中であり、2012年度中には論文として取りまとめる予定である。 第三者割当増資および公募増資それぞれの全体像の把握はほぼ終了したことで、国内では初めての包括的なエクイティ・ファイナンスの分析となりつつあると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書で記載した23年度の計画に沿って順調に進行しており、第三者割当増資および公募増資それぞれ学会で発表を行った。また、第三者割当増資に関しては経営財務研究学会の学会誌に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、第三者割当増資と公募増資の比較実証分析を中心に行う。第三者割当増資ひとつずつに対して類似する公募増資案件を抽出し、比較実証分析を行う。ここでは特にWu(2004)にならって、第三者割当増資での引受投資家によるモニタリングやシナジー効果があるのかを検証する。また、より情報の非対称性が高い企業ほど第三者割当増資を選択するというWu(2004)の報告が日本でも成立しているのか確認する。ここで、情報の非対称性の代理変数としては一部は流動性指標を用いることとなるが、情報の非対称性の高い企業は株式の流動性が低いため、流動性の低い企業ほど第三者割当増資を選択するかどうかも確認する。株式の流動性がデット・ファイナンスとエクイティ・ファイナンスの選択に影響を与えているという米国の先行研究(Lopson/Mortal[2007])を参考にすると、流動性が第三者割当増資と公募増資の選択にも影響を与えている可能性は十分に考えられる。それが情報の非対称性に起因するものか、流動性が主な要因かを確認する。 また、第三者割当増資あるいは公募増資を実施した企業や増資引き受け経験のある機関投資家を中心にヒアリングを実施し、実証分析結果に対しての実務的な問題認識の補足付けをする。ヒアリングを通じて、企業のエクイティ・ファイナンスの選択に関する意思決定メカニズムについての現場を把握し、実証分析結果と理論的枠組の齟齬の要因を検討することとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、学会出席の旅費、図書購入、外国語論文の校閲などが主なものとなる。
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