本研究においてジョブ・デザインとは、従業員の態度や行動を改善・向上させるために1.自律性 (Job Autonomy)、2.能力の多様性 (Skill Variety)、3.職務自体からのフィードバック (Task Feedback)、4.職務アイデンティティ (Task Identity)、5.務の意義 (Task Significance)、の以上5点についてデザインすることと捉えている。 日本とシンガポールにおいて411人の被雇用者への調査を行い、データを収集した。その結果、彼らの所属する企業に対するコミットメントは、そのナレッジマネジメント行動に影響を与えていることが明らかとなった。一方従業員達のコミットメントはジョブ・デザインの影響を受ける。例えば、高い自律性を与えられた従業員は、低い自律性しか与えられていない従業員に比べ、より強いコミットメントを持っている。 興味深いことに、応答曲面法を使うと、ジョブ・デザインの効果は曲線的であることがわかった。例えば、従業員の持つ能力の多様性が高すぎる場合、心理的ストレスによりかえってコミットメントは減少してしまう。すなわちそれは、能力の多様性を向上させ続けても必ずしも従業員達のコミットメントが増大し続けるわけではないことを意味する。これは先行研究とは異なる結果である。先行研究では従来のデータ解析手法の限界により、直線的効果しか検証できなかった。しかし本研究により、応答曲面法がジョブ・デザインの効果についてより正確な理解をもたらしてくれる手法であることが明らかとなった。 異なるジョブ・デザイン(自律性、能力の多様性、職務自体からのフィードバック、職務アイデンティティ及び職務の意義)の中では、能力の多様性が最も影響力があり、一方職務自体からのフィードバックには顕著な効果は見られないことがわかった。
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