研究課題/領域番号 |
23730348
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研究機関 | 四日市大学 |
研究代表者 |
藤川 なつこ 四日市大学, 経済学部, 講師 (30527651)
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キーワード | 高信頼性組織 / 高危険性組織 / 組織事故 / リスク管理 / 危機管理 / 組織学習 / 経営組織 |
研究概要 |
本研究では、原子力発電所のような高危険性組織の不測事態に対するマネジメントおよびリスク管理の過程を、経営組織論の視点から考察することで、高危険性組織が高信頼性組織となるために求められる経営管理を解明すべく、研究を進めている。 研究実施の3年目である平成25年度は、まず、高信頼性組織研究の中でも、“組織は事故(アクシデント)を未然に防ぐことができるのか”という問いに対して、2つの対立する見方をするノーマル・アクシデント理論と高信頼性理論に焦点をあて、両者の対立と協調の過程で、高信頼性組織研究がいかにして発展してきたのかを明らかにした。その研究内容は、経営学史学会第21回全国大会で学会報告するとともに、2013年度第1回HRO科研研究会において招待講演を行った。また、論文化し、経営学史学会の査読を経て、経営学史学会年報第21輯に掲載されることが決定した。 次に、高信頼性組織に内在するジレンマと管理の必要性を明らかにした。その研究内容は、日本経営診断学会第46回中部部会および日本経営診断学会第46回全国大会において学会報告を行った。 さらに、高信頼性組織化のおいて求められるマインドフルな組織文化とはいかなるものであるかを、トヨタ生産方式を採用している企業の事例を通じて、明らかにした。その研究内容はInternational Conference on Information and Social Science 2013 Nagoyaにおいて国際学会報告を行った。 また、福島原子力発電所事故を高信頼性組織研究の視点から考察し、事故の原因究明を行った。その研究内容は、四日市大学論集第26巻第2号に掲載されるという研究成果を残した。 以上のように、平成25年度の研究を通じて、高信頼性組織の事故防止過程の解明および高信頼性組織化のための管理の方途の解明が進められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究においては、組織学習が組織全体に波及しない原因、すなわち組織の学習障害を、組織内の部門間および階層間に生じる時間志向の差異の観点から分析し、さらに、このような組織の学習障害を克服するための方途を、組織デザインの視点から考察することで、論文掲載という一定の成果を残した。 平成24年度は、高信頼性組織研究の中でもノーマル・アクシデント理論と高信頼性理論に焦点をあて、両者の根底にある分析の視点の違いや重要な論点を比較、明確化した上で、両者を統合的視点から考察することで、論文掲載という一定の成果を残した。 平成25年度は、高信頼性組織研究の生成、発展の歴史を明らかにするとともに、高信頼性組織に内在するジレンマや高信頼性組織におけるマインドフルな組織文化、福島原子力発電所事故、の解明を行い、国際学会報告1回、国内学会報告3回、招待講演1回、1本の論文掲載、1本の論文掲載確定という一定の成果を残した。 以上のように、平成23年度から平成25年度までの研究において、理論研究を進展させ、高信頼性組織の事故防止過程および高信頼性組織化のための管理に関する分析枠組みを構築し、国際学会報告1回、国内学会報告5回、招待講演1回、3本の論文掲載、1本の論文掲載確定という成果を上げることに繋がった点は評価できるが、他方で、こうした理論研究を実証していくという点では課題を残していることから、研究達成度は「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の研究計画策定後に、東北地方太平洋沖地震に伴う福島第一原子力発電所という予期せぬ事態が発生した。それにより、日本の原子力発電所を取り巻く環境は一変し、研究計画の大幅な見直しをせざるを得ない状況となった。このように、日本の原子力発電所は、現在過渡期にあり、アンケート調査やインタヴュー調査の実施が非常に困難な状況にある。 したがって、当初のの計画では、理論研究によって構築したモデルを基に、アンケート調査およびインタヴュー調査を実施する計画であったが、研究計画を変更し、理論研究に主軸を置き、事例研究によって理論を実証していく研究に研究計画を転換する。 平成26年度は、理論研究のさらなる進展を通じて、高信頼性組織化の方途を明らかにするとともに、高信頼性組織の構築に向けて、高信頼性組織研究の知見の一般組織への適応可能性を探究していき、研究成果としてまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究開始直前の平成23年3月に、東日本大震災および福島原発事故という予期せぬ事態が発生し、日本の原子力発電所を取り巻く環境は様変わりした。平成26年5月現在、日本のすべての原子力発電所が、検査のため運転を停止している。 日本の原子力発電所は将来の方向性を決める過渡期にあるため、アンケート調査やインタヴュー調査を進めることが困難を極め、理論研究および事例研究へと研究の重点を移行せざるをえなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度は、現在行っている理論研究および事例研究を継続して行い、研究成果として取りまとめる。未使用額は、その研究成果の外部への発信、すなわち国際学会および国内学会での発表のために主として使用する予定である。未使用額の使用計画の内訳を以下に記述する。 設備備品費:関連研究の精査のための書籍・資料入手費用、旅費:国際学会および国内学会発表旅費、謝金等:英語論文校閲費
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