本研究では、原子力発電所のような高危険性組織の不測事態に対するマネジメントおよびリスク管理の過程を、経営組織論の視点から考察することで、高危険性組織が高信頼性組織となるために求められる経営管理を解明すべく、研究を展開してきた。 研究実施の最終年度である平成26年度は、これまでの研究内容を取りまとめることで、次の4つの研究成果を残した。第1に、高信頼性組織研究全体の概観を通じて、高信頼性組織研究の歴史的な整理を行った。その研究内容は、査読を経て、経営学史学会年報第21輯に掲載されるという研究成果を残した。第2に、高信頼性組織研究の対立する2つのアプローチであるノーマル・アクシデント理論と高信頼性理論の対立点および関係を明確にした上で、高信頼性組織における構造統制と組織化の側面について考察した。その研究成果は、図書『組織学への道』「第4章高信頼性組織の構造統制と組織化」に掲載された。第3に、高信頼性組織に内在する二重性の問題を明らかにし、二重性の管理の方途を組織構造および組織文化の視点から提示した。その研究内容は、日本情報経営学会第69回全国大会において学会報告を行った。第4に、高信頼性組織研究を統合的に考察し、ストラクチャル・コントロールの強弱およびソーシャル・コントロールの強弱から組織を4つのタイプに類型化し、それぞれタイプのの組織特性を明らかにした。その上で、原子力発電所のリスク管理の問題点について指摘した。その研究内容は、論文化し、査読を経て、組織科学第48号第3巻に掲載された。 以上のように、本研究では、日本の原子力発電所におけるリスク管理の現状と課題を高信頼性組織研究の視点から探究することで、組織事故を防止し、高信頼性組織化するための管理方途を解明した。研究期間全体を通じて、雑誌論文5件(うち査読付論文3件)、学会発表8件(うち招待講演1件)、図書1件、という研究成果を上げた。
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