研究課題/領域番号 |
23730349
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山内 裕 京都大学, 経営学研究科, 講師 (50596252)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 企業内研究開発 / 研究テーマ設定 |
研究概要 |
調査対象の会社との調整に難航したが、23年度終りからY社で調査を開始した。Y社は、日本の従業員数10万人以上の大きな技術系企業であり、その研究所の一つである材料系の研究所で調査している。まず、米国の研究期間で実施した調査に基づき、日本の研究所でどのような違いが見られるのかを、探索的に調査している。そのため、研究所の管理者や研究者へのオープンなインタビューから始めている。半独立に運営されている米国研究機関との違いとして見えるのは、事業部との連携がより必要である点である。これはある意味アプリケーション側の情報が得やすいということでもあるが、研究テーマを選択する上で足枷にもなっている。また、材料系の研究は、不確実性が高く、時間的な地平も遠く、研究の早い段階で市場を巻き込むという活動がしにくい。特に、特許を申請するタイミングが研究に投資をしてから時間がかかるため、外部の組織との連携は難しい。この組織も、他の企業研究所と同じく、事業に即した研究を行うように方向付けられている。しかし、研究テーマの選択は非常に難しいという印象である。新しい技術(シーズ)という観点から研究は、数年投資をした後結局ものにならないという経験が多く聞かれた。しかし、市場でのアプリケーションを目指した研究では、次世代の製品に組込む技術は効率的に開発しているが、新しい事業の創造にはつながっていない。他の多くの研究所が同様の問題を抱えていることから、この組織のあり方をさぐるということが研究のテーマとしていいのではないかと考えている。実際にこの研究所のマネージャーは、現在、組織のあり方やデザインについて頭を悩ませている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
震災の影響や部門長の変更などの関係で、当初予定していた調査先企業(O社)との調整がうまく行かず、調査を開始することができなかった。そのため、すぐに別の会社(Y社)にアプローチした。Y社との関係作りに時間がかかり、本社の企画部門と調整し、研究所を選定し、そしてその研究所の所長に説明した。調査への了解が得られ、23年度終りからインタビュー調査を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は調査を継続すると同時に、分析を開始する。オープンなインタビューがある程度形になり、組織の全体像が見えてくると、焦点を定めて、データ収集を行う。技術プッシュかニーズプルかという二元論的な分析を越えて、難しさのメカニズムを解明することを目指したい。特に、材料研究の技術の可能性と、市場におけるニーズとの間には、とても距離がある。その距離をどのように埋めていくのか考える。次のステップとしては、4つ程度(あるいはそれ以上)のプロジェクトを選び、フォーカスしたインタビューを通してケーススタディーを実施する。今年度は、この調査を継続し、学会発表を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査を開始できなかったため、設備や備品の購入を控えていたため、その購入を進める。また、調査をする量は計画と同じ水準を目指しているので、旅費は同水準の使用を考えている。
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