研究課題/領域番号 |
23730351
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研究機関 | 徳山大学 |
研究代表者 |
矢寺 顕行 徳山大学, 経済学部, 講師 (20582521)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 市場 / 実践 / 労働市場 / 市場装置 / 組織フィールド / 雇用 / 転職 / 人材紹介業 |
研究概要 |
本研究の目的は経営学における市場概念をとらえ直す分析枠組みの構築にある。研究計画は、第一に市場に関する様々な領域の研究をレビューし、次に、文献レビューをふまえた経験的調査を進め、最終段階として経営学としての市場の見方を提示する枠組みを提示する、という形で設計されている。 当該年度(平成23年度)は、その新たな分析枠組みの構築のための市場に関する広範かつ精緻な文献レビューを行う計画であった。レビューはM.Callonを中心とするアクターネットワーク理論に基づく市場研究と制度派組織論において市場に関する研究を行っているFligsteinの著作を中心に検討を行った。 前者については、Callonらアクターネットワーク理論の論者が中心となって展開している市場装置(Market Devices)という概念を中心にレビューをすすめ、学会報告を行った(「計算空間としての労働市場」日本情報経営学会第62回全国大会)。報告において市場における「計算」の概念の重要性をフロアから指摘され、重要な課題を得ることができた。後者については、制度派組織論におけるフィールド概念を市場としてとらえる議論を考察し、制度論的研究における方法論を精査する必要性を明らかにした(「組織論における市場概念」徳山大学論叢第73号)。 当該年度の計画は文献レビューが中心におかれており、上記の実績により市場に関するより広い見方が明らかになった。それと同時に、さらに検討を行わなければならない新たな課題も明らかになるなど、次年度以降の経験的調査を進めていく上で当該年度の研究実績は研究遂行上の重要な意義があったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画していた文献レビューをすすめ成果としてまとめる段階にある。本年度中に行った学会報告や文献研究などにより、新たに追加しなければならない課題もある。具体的には、まず概要にも述べたように市場における計算のとらえ直しである。次に経済人類学における市場研究である。アクターネットワーク理論を応用した研究が経済人類学において進められており、その領域の文献を検討する必要がる。 上記のような追加的課題が明らかにはなったものの、次年度に計画されている経験的調査には十分対応可能な範囲の文献レビューは完了しているので、おおむね順調と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究遂行上として、第一の課題は、当該年度に明らかになった文献レビューの追加的検討を進めることである。現在完了している枠組みの大幅な変更はないものの、不可欠な視点として追加する必要がある計算概念や、経験的研究を進めていく上での方法論上の問題点について、明らかにしなければならない。 第二の課題として、研究計画にある経験的研究を進めていくことが挙げられる。これは、現在の枠組みで試論的に分析を行っていくという当初の予定を進めると同時に、第一の課題で得られるであろう新たな視点を追加した枠組みに基づいて行っていく。 また、経験的研究を進めていくためのフィールドワークもこれまで以上に進めていく必要がある。現在は労働市場を中心として調査を進めているが、経営学としての独自の市場をとらえる分析枠組みの構築と言う最終的な研究目的を達成するためには、他の市場においても同様の枠組みでの調査の可能性を検討していく必要がある。そのための分析対象の探索から、具体的なリサーチサイトの探索も行う必要がある。 上記の文献レビュー、経験的研究は学会報告や論文として公表していき、市場をとらえるための分析枠組みの構築を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度においては、当初の計画よりも安く購入予定の物品(PCの購入)が購入できたこと、購入予定の冊数を計画よりも下回ったことなどから物品費の残額が生じ、調査先企業の都合により、調査が予定の回数を下回ったことによって旅費に残額が生じた。これらの理由から当該年度の研究費の残額が生じている。 次年度は本年度と同様に文献の購入費用(設備備品費)と研究協力者との研究会や学会参加、調査のための旅費を中心に研究費を使用していくこととなる。文献にかかる費用は、概要にあるように新たに検討しなければならない課題が明らかになったため、当初計画の1,300千円に当該年度(平成23年度)の残額を加えた額を予定している。旅費については、当初の計画において調査を初年度よりも多く行う計画であったため、計画の通り(1000千円)の範囲で行う。 研究遂行上の理由により変更される費用は、文献研究における追加的課題によるものであるが、大幅な変更を必要とするものではなく、おおむね予定通りに使用できるものと考えられる。
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