本研究の目的は、取引において市場が果たす役割と市場の生成・変化との関係を明らかにすることである。具体的には、アクターネットワーク理論と制度論を手がかりとしながら、市場概念そのものを理論的に問い直し、財の生成、行為者の取引能力、そして市場の生成を明らかにし、経営学独自の市場観を提示する。研究の結果、市場における財や行為者の取引能力は、市場を構成する人・物の関係性によって立ち現れるという視点を明らかにした。この視点に基づき、これまで与件として捉えられていた市場自体の分析は、人・物の関係性の構築に注目し、財・取引行為者の生成と変化として捉えられることで可能になることを明らかにした。
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