ベンチャー企業による新事業の立ち上げを支援し、創業時の経営のリスクを低減させることは、企業の成長を通じた雇用機会の提供やイノベーションの創出にも繋がり、ここに政策的な関与の意義がある。本研究では、ベンチャー企業の育成に関わる支援従事者のうち、ビジネスインキュベーション施設に配属されているインキュベーション・マネジャーに焦点を当てて、支援活動を推進するインセンティブ要因について調査を行った。 平成24年度に実施した質問票調査の結果から、次の3点が明らかになってきた。1)支援従事者のモチベーションの上位は、企業の成功や、企業からの感謝の言葉、担当業務の内容等である。2)給与レベルや昇進・昇格といった金銭的な要因は下位に位置している。3)雇用形態や年齢による差異として、正社員の方が非正社員よりも昇進・昇格を重視し、また、若年層の方が給与レベルや昇進・昇格を重視する傾向がある。 平成25年度は、上記の質問票調査の結果を深堀りすべく、支援従事者5名に対してヒアリング調査を実施した。モチベーションに関わる金銭的な要因について、「確かに重要」という意見がある一方で「これが中心になるべきものではない」という意見もあった。現状の給与レベルについて、「どちらかというと低い」という意見がある一方で、「業務内容や拘束時間等を考えると妥当」という意見もあった。また、ベンチャー支援という業務に対して、「仕事そのものがモチベーション」、「感謝される仕事、これが何よりの醍醐味」という言葉があった。 支援従事者のインセンティブ要因について、現状では金銭的な要因が必ずしも重視されていない傾向がみられた。しかしながら一方で、給与レベルに関係なく、現状でこの仕事自体に高い満足度を感じる人材が支援業務に従事している一面も推察された。支援従事者の雇用形態や業務内容等も含めた「組み合わせ」が重要であることが示唆された。
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