研究概要 |
日本では近年、司法に国民の意思を反映させるという理念の下に、様々な司法制度の改革が行なわれた。なかでも、急激な弁護士数の増加や弁護士報酬の改定が訴訟にもたらした影響は、民事訴訟の件数の増加や弁護士利用率の増加につながっている可能性が高いことが予想される。平成23年度では、翌24年度から実証的に検討するためのデータ・セットの構築を行うための事前調査、さらに文献精査等の基本的な分析を行った。 第一に、計量分析を行う上で必要となる、海外を中心とした先行研究の詳細なサーベイである。具体的には、計量分析を行う上で必要となる先行研究、たとえば、World Bank[2002],Buscaglia[1999],Posner[1996],Breen[2002],Botero,La Porta,Lopez-de-Silanes,Shleifer and Volokh[2003]etcを参考にして詳細なサーベイを行った。これにより、専ら訴訟件数を減らすことで裁判の遅れを解消することを考察している先行研究と本研究の違いを明確化することができるなど、また、分析モデル、計量分析の手法に関する有益な情報を得ることができた。 第二に、分析で用いるデータベースの構築である。ここでは、具体的な作業として、民事訴訟に関する司法統計データと弁護士報酬に関するアンケート調査結果など異なるデータセットを作成するため、電子化されていない数値データの入力及び共通項として利用できる項目の整理と対応させる作業などで、かなりの労力を要した。 作成したデータベースの一部(クロスセクションデータ)を用いて、簡単な分析を行い、概観について、法と経済学のワークショップで報告を行った。こうした一連の作業工程を経ることにより、計量分析の一連の流れ、研究を遂行するに当たっての問題点等を把握することができた。
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