研究課題/領域番号 |
23730360
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
樋口 友紀 大阪府立大学, 経済学部, 准教授 (60552065)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 時系列解析 / 予測 / ブランド / 設備診断 |
研究概要 |
(1)各種予測手法の精度向上、改良について。非定常確率過程の時系列データをよりよく予測するために、本年度は線形及び非線形モデルによるトレンドの除去について、GAによる組み合わせの重みの最適解導出方法の理論部分を構築した。さらに、株価データや販売データなどを本手法に適用して何度も検証を実施した結果から、非常に高い精度での予測が可能であることもわかっている。本研究成果は、販売予測など予測精度を上げることが切望されている分野を始め、各方面への貢献度は非常に大きいと考えられる。(2)ブランド選択推移構造の分析について。本テーマでは、今年度Block Matrix化の手法を利用して、メーカー毎における推移状況の把握や販売予測を可能とするモデルを構築した。また、自動車の乗り換えデータやジュエリーの販売データなどを適用し、本手法の有用性を確認後、モデルを2次へと拡張した論文を作成した。今後は1次との精度の比較を実施予定である。現在、消費者の購買後満足度を加味した予測モデルを構築している。これらの理論及び検証結果は、マーケティング戦略の立案及び検証に極めて有効に活用することが可能であると言えよう。(3)設備保全技術の向上、改良について。衝撃波を三角形あるいは半三角形で近似した簡素化モデルにおける、Kurtosisを利用した設備診断技術について、本年度はこれまでよりさらに詳細にKurtosisの挙動を分析している。Kurtosis値は傷が大きくなるにしたがって単調に増加せず、上昇のち下降、そして再度上昇する、という傾向が見られることもあった。これは過去の実験結果や他の文献でも確認されている。この一見不可思議な現象の原因を今回のモデル化で解明できており、これは大きな発見と言えよう。なお、上記3テーマにおける論文は、本年度実施された国際学会にて計12件発表を実施しており、紀要にも投稿している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)各種予測手法の精度向上、改良について。本テーマではGAを用いたトレンド除去による予測手法の理論部分構築に加え、実データでの検証も十分に実施できている。現在は他時系列モデルとの精度比較について検討を行っている段階であり、当初の計画通りの研究成果が出せているものと考えられる。(2)ブランド選択推移構造の分析について。Block Matrix化手法を利用したモデルでは、自動車データによる検証にて有用な結果を得られている。また、拡張2次モデルと1次モデルの比較についても計算は終了しており、こちらも望ましい結果となっている。購買後満足度を加味した予測モデルについては当初の計画に入れていなかった部分であるため、計画以上の成果があったと言えよう。(3)設備保全技術の向上、改良について。設備異常検知の手法として、簡素化モデルにおけるKurtosisの挙動をより詳細に分析しており、十分な成果が出せていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
(1)各種予測手法の精度向上、改良について。本テーマでは、次年度は(1)GAを用いたトレンド除去による予測手法の、他時系列モデルとの比較による精度検証、(2)月次の他に曜日によるトレンド除去の実施、(3)指数平滑法における理論解導出について、条件を満たすもの、満たさないもの、トレンドの重みなどから使用データの特徴を分析する予定である。また、間歇需要予測についても各種工夫を盛り込みながら、取り組んでゆく予定である。(2)ブランド選択推移構造の分析について。次年度は、購買後満足度を加味した予測モデルについて、実データを使用して精度の検証を行う。また、自動車データの他にも飲食業界データ等を用いてブランド推移を明らかにする予定。商品やメーカーのランク分類についても、コレスポンデンス分析などを用いて科学的な手法を導入予定。(3)設備保全技術の向上、改良について。次年度は、診断手法をn次元量化に拡張し、検討を行う予定である。また、上述(1)および(2)の研究成果と併せ、これらの論文を国際学会にて発表予定である。国際学術誌には現在投稿中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、ICSI(韓国にて開催)、APIEMS(タイにて開催)など国際学会における論文発表を2件予定している。その他、必要書籍やトナーなどの消耗品購入、年度末に研究内容をまとめた報告書を作成する予定である。
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