研究課題/領域番号 |
23730362
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研究機関 | 北海道工業大学 |
研究代表者 |
湯川 恵子 北海道工業大学, 未来デザイン学部, 准教授 (20420763)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 技能伝承 / 人材育成 / 技能の可視化 |
研究概要 |
初年度は世界有数の高い熟練技能を保持するわが国の工作機械産業の熟練技能人材育成をいかに加速化するか,その教育システムを考える際のインタビュー調査を中心に実施した.工作機械産業の人材育成プログラムにまつわる現状を概観してみると,「OJTに大きく依存した人材育成」や「人材育成システムの未整備」の問題が顕著となった.これまで人材育成システムが構築されなかった背景には,第一にOJTによる経験の引き継ぎに依存する教育体制が伝統的にとられてきたこと,第二に熟練技能をデジタル化,文書化,データベース化,機械化して技能伝承の問題に対処しようとする試みに対して,技術流出や国際競争力を維持できないといった議論が沸き起こってしまうことなどがあることがわかった. しかし,人材育成プログラム策定のための熟練技能のモデル化は,技能獲得が過去の経験値の上に新たな経験値を蓄積し共有するスパイラルアップのシステムとして発展してきたものであるため,おいそれと模倣することは難しい.ゆえに熟練技能者の行うプロセスをモデル化し,これを技術に置き換えることで熟練技能人材育成に役立てていくことができるとの知見を得た.そこで初年度は「人材育成の現状整理」を行い,現場で行われている各種作業を教育に対する重要性や緊急性によって重みづけを行うことで,たとえば10年かかっていた高度技能人材育成の加速化への道筋を技能の技術化の側面から追究し,そこから好適な教育方法に関する仮説を導き出すことに注力した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熟練技能者の知識や経験のみに蓄積されてきた熟練技能を,技術への置換可能性の視点から可視化整理を行うための調査フローとして以下の3段階によって人材育成プログラム提案を考えているが,初年度は2段階の途中まで整理することができた.1段階:作業分類の抽出…作業を大・中・小分類に分け,作業の項目を抽出2段階:アンケート調査の実施…作業分類について難易度,出現頻度,教える際のポイント等を調査3段階:人材育成のための「技能マップ」作成…技能を体系化した技能表=「技能マップ」を作成し,業界,あるいは各社の強み・弱みを一覧し,人材育成策に活用しうる人材育成手法の提案を行う.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に整理された人材育成の現状データを俯瞰的かつ多角的に分析することによって,これまで熟練技能者の知識や経験のみに蓄積されてきた不可視の熟練技能を工程や作業との間で関連付けていきたい.そのために2年目は蓄積された熟練技能情報を類型化,体系化する試みのなかから競争優位の源泉として思考モデルの一部可視化が可能か否か,議論を深めていく.そのために,ものづくりの現場ならびに工作機械技術に知見のある識者への研究協力依頼ならびにインタビューを通じて技術面のみならず経済面並びに文化・社会面の諸相から人材育成システムを構築していく試みの新奇性や独創性を保持しつつ今後の研究を推進していきたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究をさらに深化させるために、次年度は企業へのアンケート調査,インタビュー調査および識者へのインタビュー調査ならびにその成果発表が中心になることが予想されている.ゆえに助成金は主に以下の事柄に使用していきたいと考えている.(1)旅費(各種調査・研究会参加・成果発表)(2)アンケート調査に係る費用(3)聞き取り調査にまつわる謝金,アンケート整理に係る人件費(4)その他雑費(通信費・書籍代等)
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