研究概要 |
本研究では,わが国の工作機械産業に着目し,人材育成を加速化させるための熟練技能教育プログラムの構築を目的として,工作機械のうちマシニングセンタの加工作業を対象に作業を細分化し,これらの作業の重みづけを行うことで,どのような時期に,どのような作業を,どのような方法で教育していくと人材育成が加速化されるかを明らかにした。結果,人材育成加速化のための作業分類を提案するなかで,「OJTでの教育が効率的な作業群」「Off-JTでの教育が可能な作業群」「熟練技能のまま伝承する高度熟練技能群」に分類可能であることが導き出された。 加速度的な人材育成プログラムの構築においてカギとなるのは,Off-JTの有効活用である。つまり教育の時期が相対的に中間におかれる作業はOff-JTの併用により教育が行われており,この作業群を早い段階でどう教育するかという工夫が行われれば,今よりも「教育の時期」を早めることができるので,これによって熟練技能習得を加速化できるのである。 そこで重要なポイントは第一に,技能依存度が低く,すでに教え方のノウハウの蓄積のある作業は,整理しやすいからといって,必ずしもマニュアルや指示書にする必要はなく,現場でのOJTで教育をした方が効率的であるということ,第二に,反対に技能依存度が高く遅い時期に教育される作業群は,モデル化することを主眼とするのではなく,従来通り熟練技能のまま伝承することで,模倣を防ぎ,わが国の競争優位性の源泉として保存しておくことが望ましい熟練技能群と捉えることである。 本研究で明らかになった作業分類は,熟練技能教育プログラム構築の上でOJTとOff-JTの活用指針を示すとともに,わが国の国際競争力の源泉として熟練技能のまま保持可能な高度熟練技能の存在を強調することになったといえよう。
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