研究課題/領域番号 |
23730363
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
生稲 史彦 筑波大学, システム情報系, 准教授 (10377046)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | コンテンツ / イノベーション / デジタル化 / ビジネスモデル / 産業集積 / 中国 / 韓国 / 台湾 |
研究概要 |
今年度(平成23年度)は、国内の企業調査、資料収集、データ収集を行い、本研究の基礎を固めた。これまでの研究の蓄積に基づき、日本で積極的にアジア圏(韓国、中国、台湾など)に進出している企業を選定し、二次資料の収集などを進めた。また、問題意識を共有する研究者と共に、定期的に研究会(コンテンツ産業研究会)を実施し、ヒアリングにおける調査項目、調査計画を、より詳細なものとした。二次資料とデータの収集、および研究会での検討から、調査においては、アジア圏の各国、各地域での(a)事業戦略、(b)現地企業との協力、提携関係、(c)海外展開上の課題、などを明らかにすることが必要であることを再確認した。同時に、アジア圏で活動する企業、あるいはそららと共に事業活動を展開する国内企業は、東京に限定されず、福岡や広島などでも調査する必要性も浮かび上がってきた。これらの研究成果は、拙著『開発生産性のディレンマ―デジタル化時代のイノベーション・パターン』(有斐閣)や、東京大学ものづくり経営研究センター(MMRC)のディスカッション・ペーパー、広島大学におけるシンポジウム、北陸先端科学技術大学院大学での研究発表などの形で公表した。国内とアジア圏を視野に入れたコンテンツの市場、そこで活動する企業の研究は、その社会的な影響に比して、未だに蓄積が十分でない。言い換えれば、現実(実務)の変化に、学術的な知見が追いついていない。このギャップを埋めることが、少しでもできたことが、今年度の研究の意義であると考える。以上のように、今年度の研究成果は、日本を中心としたアジア圏の企業活動、市場動向の概括的把握であった。それに基づいて、国内調査、海外調査に用いる調査票、海外訪問先企業のリストを作成できた。これらの調査票、訪問先リストは、来年度(平成24年度)以降の実地調査に役立てる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本を含む、中国、韓国などのアジア圏では、コンテンツへの関心が高まっている。これは、実務および政策の両面で見られる傾向である。そのため、データ、資料収集などは、予定よりも順調に進めることができた。すなわち、データおよび資料を利用して、韓国、中国、台湾などのアジア圏で活動している企業を選定し、その概要、特徴、際だった取り組みなどを把握することができた。また、研究の問題意識を共有している研究者たちと、研究会などで意見交換、研究発表をすることにより、問題意識の焦点化、対象分野の絞り込みなどが可能になった。今年度(平成23年度)の目的は、国内企業の現状把握と、海外調査のための基礎固めにあったと考えている。具体的には、前述のように、国内調査、海外調査に用いる調査票、海外訪問先企業のリストを作成できた。この点から言えば、今年度の研究は計画に即して、おおむね順調に進展していると、いえる。しかしながら、コンテンツを含むIT分野は急速に変化している。さらに、中国や韓国、日本などのコンテンツ市場は、急成長をしている。この変化と成長の速さに比して、研究による知見を積み重ねが追いついているとは言いがたい。この点は反省し、来年度(平成24年度)以降の研究で補って行きたい。また、アジア圏を展望した市場の成立可能性と、そこで活動する企業活動を適切に捉えるためには、当初考えていた以上に、日本企業の動向を理解することが不可欠であることが認識された。これは、日本の企業、クリエイター、ユーザが、アメリカなどとの競争と協調、交流の中で、コンテンツ分野を牽引してきた事実があるからである。日本の企業と市場について、「研究の目的(研究計画)」策定時よりも、時間などを割いて研究を進める予定である。この点でも、来年度以降の研究をテンポアップさせるべきであると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、国内で活動する日本企業、韓国や中国の企業を対象とした国内ヒアリング調査を継続する。国内調査の目的は、日本企業から見たアジア圏市場の魅力と課題、アジア圏の企業から見た日本市場の現状を把握することである。同時に、日本企業については、今年度の資料収集やヒアリングなどを通じてリストアップした企業をまず対象とし、順次研究対象を広げていく。在日の韓国、中国企業については、主にオンラインゲームやオンラインサービスを提供している企業を、調査対象とする予定である。第二に、中国、台湾、韓国のいずれかの国、地域において、海外調査を実施する。海外調査の目的は、海外企業の活動、日本企業の現地法人の活動を把握することが中心である。加えて、アジア圏各国、地域の市場がどのようなものかについても、把握することを目指す。海外調査によって、日本で行った聞き取り調査の内容を裏付ける。同時に、現地の消費者(市場)の状況も把握することに努める。第三に、ヒアリング調査と併行して、アジア圏の各国、各地域に関する資料、データなどの二次資料収集を進める。これは、対象が限られてしまうヒアリング調査の妥当性を確認し、より一般的で、確度の高い知見を得るためである。第四に、ヒアリング調査、資料やデータなどでは十分に知り得ないアジア圏の企業と市場については、実務家や研究者を招聘して、より詳しい情報を得る。現在の予定では、台湾の研究者の招聘、中国の研究者との交流を考えている。アジア圏のコンテンツ市場に詳しい研究者から教えを請うだけでなく、将来的な、コンテンツ分野研究者のネットワークの構築を視野に入れている。最後に、これらの国内外調査、資料収集、海外研究者との交流成果を、主に日本のコンテンツ市場の現状を中心にとりまとめ、公表する準備を進める。来年度に一定の研究成果をとりまとめることで、平成25年度の最終報告を充実させたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
【現在までの達成度】で述べたように、今年度(平成23年度)は国内での活動(データ、資料収集、研究会開催など)に予想以上に時間を掛けた。そのため、予定していた海外での調査が実施できなかった。そのため、大きな額の繰越金が発生した。今年度は、国内外での実地調査などを予定しているため、繰越金を旅費などとして支出したいと考えている。具体的には、国内外のヒアリング調査、海外研究者との研究交流のためには、旅費が必要となる。来年度支出可能であると考えられる研究費の半分ほど、100万円程度を旅費として支出する予定である。具体的には、ヒアリング調査の旅費、滞在費として、1回10万円程度の費用が必要であると考えている。このような調査を年間7回程度行うために、合計70万円程度の支出を予定している。また、海外研究者との交流のためには、1人の海外研究者の招聘に15万円を要すると見積もっている。最低でも2人程度の研究者の招聘をしたいと考えているので、合計30万円程度の支出が必要となる。資料の収集には、30万程度の支出を予定している。確度の高い(信頼の置ける調査機関、団体などから購入する)資料やデータなどの二次資料は、最低でも1~2万円が必要であると考えられる。そうした二次資料を10~15本程度購入予定である。こうしたヒアリング調査の結果を整理したり、海外研究者との研究交流を記録として残したり、収集した二次資料を整理したりするために、数名の大学院生を雇用し、協力を得たい。そのために、人件費の支出が必要である。規定額の時給1,470円で、一日4時間・月平均16時間(4日程度)、のべ200時間程度雇用したい。このために、30万円程度の支出を見こんでいる。物品の購入には30万程度を予定している。研究遂行に不可欠なPCなどの情報機器を20万円程度購入する。また、通信費や消耗品購入などに10万円程度する予定である。
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